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エディット通信(2020年花筏号)

■高橋輝次編著『増補版 誤植読本』(ちくま文庫)を読んで

2020.4.1

今回は『増補版 誤植読本』(ちくま文庫/高橋輝次編著)を紹介させていただきます。

この本は,5章立てで,作家,随筆家,研究者など,53人による文章(小説も有り)が収められています。誤植にまつわるエピソードであるため,後悔・反省・情けなさを語ることが多くなりますが,その人の思想が映し出された味わい深い読み物になっています。

編著者の高橋輝次氏は,創元社を経たのち,フリー編集者になられます。

『編集会議(2017年11月号別冊)』において,「『誤植読本』編著者が語る誤植はつらいよ」として,大きく紹介されています。

高橋氏の文章も,本編に「冷や汗をかく編集者」として収められています。このアンソロジーを編まれるに至った,高橋氏の人となりをうかがい知ることのできる内容です。

高橋氏ご自身が編集された書籍において,「本文以外の目次やトビラ,柱,奥付,裏広告などで思わぬポカをやったことが多いようだ。」と自らの弱みをさらけ出しつつも,文章のなかでは,明るく自己分析されています。

所収の澁澤龍彦氏「校正について」では,校正者に対して、「近ごろの校正者の通弊として,私がもっとも困ったものだと思うのは,やたらに字句の統一ということを気にする点である。」と記しています。

教材編集をしていると,表記・用語統一という観点によるチェックがよく入ります。

それは大事な作業ではありますが,扱う書籍によっては,著者の,ニュアンスによる使い分けを台無しにしてしまう統一を,無意識に行ってしまうことがあります。

気を付けたい指摘です。

もう一点、身につまされる例として,森銑三氏「誤植」の「誤字は,印刷所で注意して植字してくれるなら問題はないが,時には印刷所が気を利かせたつもりで飛んだ誤植をしてくれたりする場合もある。」という指摘です。

森氏の時代は「植字」の時代で,いまとは異なる作業ではありますが,人が介在して「気を利かせる」ことによる弊害は,今の時代にも大いに起こりうることです。

編集者は,制作関係者との関わりにおいて,十全の注意を想定しておく必要があります。

この『増補版 誤植読本』は,日ごろ校正にかかわる人たちへの報告書のような趣もあり,≪明日からもがんばりましょう≫というエールのようにも映ります。

高橋氏は,「あとがきに代えて」で「結局は人の振り見てわが振り直せ,ということになるのだろう。」と言われています。

とかく,他人の誤植は鋭く指摘するのに,自身のこととなると無頓着,ときたものですが,この本を通読すると,少し気持ちが楽になります。

他方で,さらに校正に対する姿勢が謙虚になって,自分を振り返るのに,良い本ではないかと思った次第です。

よろしければご一読ください。

高橋輝次編著『増補版 誤植読本』(ちくま文庫)の詳しくは……
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480430670/

(文責:名古屋本社・企画ソリューション部 伊藤隆)