<略歴>
桑沢デザイン研究所を卒業後、真鍋 博アトリエにて装丁を学び、1968年装丁デザイナーとして独立。ベス トセラーとなった日本経済新聞社刊、堺屋 太一著「油断」を皮切りに、村上 春樹氏、東野 圭吾氏、宮部 みゆき氏、など著名作家の作品をはじめ、長年にわたって、フィクション、ノンフィクションと広範囲の装丁を 手がける。2008年、第39回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。現在、スタジオ CGS を主宰。
今回は、事前の案内と少し変わって、話を展開するために、引きだし役として元PHPの編集者の山田さんが加わり、川上さんのこれまでの作品(主に、書籍のカバーデザインを中心にして)を、プロジェクターを使ってスライドを見せながら、エピソードを語るという展開だった。
「見せる」技術についてのテクニカルな説明ではなく、装丁家が何を考えているのか、あるいは編集者や作家とどう向き合っているのかという話。
あまりに沢山の作品があり、それについてエピソードが沢山あり、少し時間がオーバーしてしまった。
今回のセミナーは、技術論というより、一人の装丁家が本をつくるとき、どんな苦労をしているのかがよく分かって面白かった。一つの表紙がどうできていて、どこに工夫したかというより、内容がどのように面白いのかを切々と語られる川上さんを見ているとこの人は、本当の活字や本が好きなのだなということがよく分かる。
そういう意味で、辞書、教科書、実用書、一般書、サイエンスもの、小説など、幅広ジャンルで装丁を手掛け、どれも、面白い本になっているので、スライドを眺めているだけでも面白いし、勉強になると思われる。