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エディットお役立ちレポート

2019-02-21 第13期第8回AJEC「編集教室」に参加して

【講義内容】◎編集者が心得ておきたい「最新の著作権知識」

講師:桑野 雄一郎(くわの ゆういちろう)氏
高樹町法律事務所・弁護士
【講師略歴】 1991年早稲田大学法学部卒業
1993年弁護士登録 (第二東京弁護士会・45期)
濱田松本法律事務所入所
1998-2001年 最高裁判所司法研修所 所付を兼務
1999-2002年 中央学院大学 講師を兼務
2001-2003年 濱田松本法律事務所 パートナー
2002年 統合により森・濱田松本法律事務所と改称
2003-2016年 東京藝術大学 大学院 講師
2003年9月 骨董通り法律事務所を設立
2005-2016年 株式会社昭文社 社外監査役を兼務
2006-2009年 最高裁判所司法研修所 教官を兼務
2009-2017年 島根大学大学院法務研究科(山陰法科大学院)教授を兼務
2014-2017年 山梨学院大学法科大学院 講師を兼務
2015-2019年 成蹊大学法科大学院 講師を兼務
2018年3月 高樹町法律事務所を設立

講演内容はAJECのアーカイブにてご確認ください。

<概略>

はじめに〜著作権法はコンプライアンス泣かせ
第1 著作権の基礎
 @著作権とは
 A著作権についての思考順序(1)
 ・問題となっているコンテンツは著作物か
 B著作権についての思考順序(2)
 ・誰がそのコンテンツの権利者か
 C著作権についての思考順序(3)
 ・利用方法が著作権に抵触するのか
 D著作権についての思考順序(4)
 ・例外規定にはああらないか
第2 編集者と著作権
 @ノンフィクションにおける「事実」を巡る問題
 Aフォントをめぐる問題
 B版元との関係で問題になること

<講演内容について>

桑野さんの話は、分かりやすかった。ただ、時間が少なかったので、細部があまり説明されなかった。

桑野さんによれば、著作権法は、極めて曖昧模糊としており、複雑怪奇になっているという。そのため、@違法か適法かの判断が難しい。また、コミケやコスプレ、ネット利用など、A違法なのに暗黙の了解のもと公然と行われていることがある。さらには、B適法なのに、違法であるかのように扱われていることもあるという。最後のものは、エア著作権といわれ、神社仏閣の写真やスカイツリーの写真などがこれにたるという。たとえば、金閣寺の写真に著作権があるわけではないが、金閣寺の取材などするときに断られないようにするために、お布施として使用料のようなものを払っている。

このように、私たちは、往々にして、グレーゾーンだと認識しつつ著作物と思われるものを利用することになることが多いし、その場合は、問題発生時の迅速かつ的確な対応が必要とされるということになる。そのために、それがグレーゾーンだということをよく理解しておくことが大事だと主張されていた。

<質疑応答>

@ 編集者や監修者の権利はどうあつかわれるのか?

→ それぞれの人が、その本にどう関わっているかによって変わってくる。多く朱入れをして、修正された場合などは、監修者にも著作権が発生すると思われる。

A 挿絵のラフの著作権はどうなるのか?

→ ラフの完成度によって違ってくると思われる。

B 将棋や囲碁の棋譜には著作権はあるのか?

→ 賛否両論あるが、ネットの世界では、ないという人が圧倒的である。しかし私は、著作権で保障してあげたい。たとえば将棋などは、二人のアイデアの苦労の成果として認めてあげたい。

C フォントには著作権はないというが、将棋のコマに使う場合などはどうか。

→ 著作権侵害にはならない。

D 社員やアルバイトが書いたイラストの著作権はどうなるのか?

→ 明文化されていなければ、職務著作となり、会社のものになる。

E 海外の論文の書影などの使用について

→日本の国内で訴えられた場合は、日本の法律に従って処理される。ただし、配信された場合などは訴えられた国になる可能性がある。

<感想>

著作権の基礎から分かりやすく説明されたので、どういうときに問題が起きるのか、よく分かる講演だった。

著作権法は、編集者がいちばんお世話になり、配慮しておかなければいけない法律であるが、時代の変化に合わせて、いろいろな追加がなされ、法律の条文にはあちこちに関連事項が入り乱れていて、分かりにくくなっている。そのためにも、体系的な内容がどうなっているかということを知ることは大事だと思われる。昨年、著作権法は、大きく改正されたばかりなので、これから新しい解説本が出版されてくると思われる。

今回の著作権法改訂で、大きく変わったところは、@保護期間が、死後70年になったことと、Aデジタルデータの処理の問題である。@はTPPに合わせて改定されたものだ。また、Aは、デジタル化された文書がサーバーにある場合、検索サイトなどでどこまで表示されることが許されるかなどの問題であり、今回の改定でかなり緩くなっている。また、AIなどで学習するために機械が読む場合は、著作権の処理の仕方が違ってくる場合がある。この点は、非常に微妙な問題があり、難しい場合があるので、注意する必要がある。

さらに、デジタル教科書の著作権のように、著作権者に許可無く勝手に使ってもよいが、その場合は、補償金を支払う必要があるなど、新しい対応が必要になって来るものが増えてきている。

ユーチューブやニコニコ動画などでは、サイトの方で、一括してJASRACとライセンス契約をしておけば、ユーザーが自作の動画をアップしても、音楽著作権をクリアできるというような方法を利用している。こうした一括処理の仕方は、Webサイトなどで利用ではこれからどんどん使われる方法だと思われる。

このように、インターネットの普及により、著作権の処理の仕方がかなり複雑になってきており、今回の講義だけでは、まだまだ知識として不十分だと思われるので、さらに、来年度の編集教室で問題別に取り上げてもらいたいと思う。

最近読んだ、著作権法の入門書としては、以下の2冊がとても参考になった。安い本なので、是非一度目を通しておくとよいと思った。

@ 池村聡著『はじめての著作権法』(日本経済新聞社・2018.1.15)本体900円

A 稲穂健市著『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書/2017.2.15)本体860円

ただし、上記の本は、著作権法の改訂前の本なので、その点だけは注意してもらえれば、なかなか面白く読めるものだと思う。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)