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エディットお役立ちレポート

2019-05-16 第14期第1回AJEC「編集教室」に参加して

【講義内容】◎編集力「どうしたら相手の心に寄り添えるのか」

講師:箕輪 厚介(みのわ こうすけ)氏
幻冬舎・NewsPicks Book編集長
【講師略歴】2010年双葉社入社。ファッション雑誌の広告営業として4年間、タイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。2014年から編集部に異動し、『たった一人の熱狂』見城徹/『逆転の仕事論』堀江貴文など、多数の本を編集。2015年幻冬舎に入社。NewsPicks Book編集長のほか、東洋経済オンラインのアドタイでのコラム編集、オンラインサロン運営、堀江貴文大学校で特任教授などを務める。2017年10月合同会社波の上商店を設立。2018年1月株式会社エクソダス取締役に就任。

講演内容はAJECのアーカイブにてご確認ください。

箕輪さんは、現在33歳、2児の父親でもある。とてもラフな格好で登場。講演が終了後は、羽田からシンガポールに直行だそうだ。

講演は、小林社長がインタビュアーとなり、質問し、それに答えてもらうという形式。

<講演概略>

1)光本勇介著『実験思考 世の中、すべては実験』(幻冬舎刊)の話
2)編集者の仕事について
3)本の作り方について

1)光本勇介著『実験思考 世の中、すべては実験』(幻冬舎刊)の話

テレビで紹介されていたということで、小林社長から幻冬舎刊、光本勇介著『実験思考 世の中、すべては実験』(NewsPicks Book)の出版の経緯について質問があり、それに答える形で、まず講演開始。

編集者の仕事を魚の料理ということで例えると、ポイントは三つある。

@魚を釣る

A料理する

B提供する

この釣るということが、著者の口説き方になってくる。普通の人は、ここがなかなか難しいが、箕輪さんは、自分で「釣り堀」をつくってしまったという。

光本さんと酒を飲んで話をしていて、「0円の本を出すなら、書いてもいいよ」ということになり、出版が決まった。しかし、いくらなんでも「0円の本」はやりたくないので、校了直前まで、本体1400円、18000部で出版すると決めていた。多分、「0円の本」の話は、酔って話していたことでもあり、これでよいのではと思っていた。が、校了直前になって、光本さんと話をしたら、どうしても「0円だよね」ということになり、急遽、紙の本は原価の390円、Kindle本は0円で出すことになった。社内のコンセンサスをとるためにあたふたと営業を説得したが、さすがに取次などは「0円の本」は売ってくれないということで猛反対があり、妥協して安い値段(原価)で、光本さんを説得し、また「これは見城社長も了解済み」という話を作り上げ、社内的な合意を実現。このように、編集者の仕事は、本当はとても泥臭いことをやっている。

双葉社の広告担当をしていたとき、与沢翼の雑誌をつくった。与沢翼責任編集の雑誌は、創刊日に逮捕、廃刊となり話題になった。ただ、出してからの逮捕だったので、雑誌は完売してしまった。

次の本は、双葉社の編集部に入って、見城徹『たった一人の熱狂』。このときは、熱烈な手紙を書いて、見城さんに会ってもらい、説得した。

堀江貴文の『多動力』の場合は、想像力を働かせて、相手が何を求めているかを考え、それにそって提案をした。堀江さんは扱いづらい人で、普通に話していると、常にスマホをいじっていて、聞いているのかいないのか分からなくなってくる。しかし、もともと、堀江さんは効率を大事にしているひとで、そこを考えた。

圧倒的な想像力と、圧倒的な熱意があれば、相手は乗る。

2)編集者の仕事について

文芸ものの編集者は、問題が多いと思っている。文芸ものは、一部を除いて儲からないし、編集者に若い人が少ない。出版界は、村社会になっている。これは、いまのマスコミ全体がそうだ。

SNSが登場して、出版の世界は、崩壊しかかっているが、そういう自覚がない。特に大手の場合は、サラリーマン編集者がよい給料もらっていて、競争していない。

現在、編集者のライバルは、ストリートファイターである。売り方も内容も境がない。

昔は、本を売るというのは、可処分所得の奪い合いだったが、現在は、可処分時間の競争となっている。これからは、可処分精神の奪い合いになる。つまり、まず「心」を奪うことが大切。

心を奪うためには、こちらすべてをさらけ出すことが必要である。こちらの心を見せないとだれも信用してくれない。

光本勇介著『実験思考』は、カンパで4700万円集まっている(箕輪さんの講演日の金額)(2019年6月現在は6000万円を超えている)。

編集者は何でも屋である。つくることと売ることは車の両輪。

もともと、面白いことを集めて、編んで売るのが編集者の仕事だ。

3)本の作り方について

「本=テーマ×著者」だと思っている。

青木真也著『空気を読んではいけない』をつくったのは、私が青木真也の格闘技が本当に好きだったから。ある意味では、青木真也は、本当に世の中のことを知らない人だった。私は、格闘技が好きで、青木真也が好きで、この本をつくった。とにかく、自分が面白いと思わなければだめ。

本は編集者がつくるものだが、まず目次づくり・構成をしっかりしておかないと、本がだめになる。この構成に串を通すことが大事。寄せ鍋的なものではだめ。そうしないとよいインタビューができない。

串を通さないと、本の内容が読んでも記憶に残らない。構成をしっかりして、読者がみんな読み終わる本にする。読者が本を読み終わらないと、この本は面白よとアピールできない。

インタビューのうまい人は、答えが分かっている質問はしない。予定調和のインタビューはだめ。インタビューすることによって、そこに新しい発見があって、初めて本にできる。

堀江さんの本をつくったとき、「多動力」とは、同時並行でいろいろなことをやるということではなく、自分が周りの人たちをうまく使うこと、つまり、周りの人にやらせることだと知った。つまり、「まわりを動かす=不動力」だ。そういう発見をした。

編集者は、プロデューサーだと思う。大変だけれど、楽しんでやることが大事。

本をつくって、どうするのか。小説などは、感動してもらえばよい。実用書はどうするのか。SNSの時代にそれをしっかり考えたい。

大切なことはノウハウではなく、心構えと覚悟である。編集技術などは、猛烈に望むことがあれば、後でついてくる。ステージに上がることが大事。日本人は叩かれることを怖がる。

<質疑応答>

@ 箕輪さんは本を出して、何をしたいのですか。

→大きな声を出したい。放火魔になりたい。皆さんは、しばられない人になってほしい。みんながまんしないで、自分のステージに立てばいいと思う。

A これからやりたいことは何ですか。

→特にない。走りながらやっている。だから、いつかやりたいということはない。やりたいとことはすぐやっている。

B いろいろなことができる箕輪さんの特性は、どこからくるのですか。

→成功体験があるから。昔はストレスがたまったが、いまは平気。常に新しいことにチャレンジできる。死ぬ気になれば、何でもできる。

<感想>

読書というのは、他人の経験を、言葉を通して体験することである。物語の主人公や、自分の思想や体験を語る著者になり、その人の体験や物語を体験することだ。私たちは、言語をもつことによって、自分だけの小さな世界にいながら、広い大きな世界を経験できる。不思議なことに、脳は、実際にそこに行かなくても、想像の世界でそこに行くことで、あたかも経験したかのような体験ができるようにできているのだ。新たな体験とは、今までの経験で学んできた自分の物語を、感覚から入力されてくる少しの情報と接続することによって、自分の新たな物語をつくることだとも言える。そして、人は、自分の世界を広げていくのだと思う。

箕輪厚介さんの仕事は、まず、自分が著者の世界に憑依して、著者になり、本をつくっているようだ。つまり、箕輪さんは著者になりきって、自分で本をつくっているのだとも言える。

今、世の中に出回っている本は、すべてを読了されると思われる本は少ないと思われる。特に、実用書などは、初めから終わりまで丁寧に読むということはあまりないのではないか。箕輪さんは、読者が読了する本をつくりたいという。そのためにいろいろ工夫するのだという。そのためのポイントが、まず自分自身が面白いと思うことだという。

編集者の仕事は、魚の調理のようなもので、まず、@魚を釣ってきて、Aそれを料理し、B最後に食卓に供するという段階を得るというのは、箕輪さんの好きな喩えだそうだ。そういう意味でも、編集者は、つくるだけではなく、売ることも視野に入れながら、本をつくらなければならないという。

また、編集技術は、いろいろ語ることができるが、本当はそんなことはどうでもよく、この人の本をつくりたいというやる気さえあれば、だれでも身に付けられるものだと言う。箕輪さんは、いつも最初、こんな本、ほんとにできるのかという思うことがあるが、自分には成功体験があるので、やればなんとかなると思い、突き進むだけだという。

いま、直木賞を狙って作家を育ててみようと思っているが、知り合いの編集者から、絶対に、編集担当者は箕輪だと言わない方がよいという。箕輪がつくったというだけで、直木賞はとれないと言われているらしい。

「箕輪に本をつくってもらいたい」というようになることが大事だという。そのために、自分は自分のキャラをつくっている。Webの時代の新しい編集者なのかもしれない。

箕輪厚介さんは、小説を読むように、実用書を読ませることができる編集者かもしれない。彼の本を読むと、確かに何かを体験できたような気がすることだけは、確かだ。また、講演を聞いていると、いま、自分は新しい何かに出会っているのかも知れないという気がしてくる。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)