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エディットお役立ちレポート

2019-06-06 アソビモの電子書籍リセールプラットフォーム構築

デジタルコンテンツのリセールと、リセール時の出版社・著作者利益の実現に向けて

6月6日の新文化 の1面に、「電子書籍リセールプラットフォーム構築、アソビモ『アソビマーケット』で電子書籍6月15日スタート/出版社40社・7000点出品」という記事が掲載された。なお、この場合のリセールとは、エンドユーザーによる再販売・中古転売を指す。

アソビモ は、「日本でナンバーワンのオンラインゲーム会社になる」という夢をいだく、オンラインゲームの開発・運営会社。2003年に設立され、2017年時点の資本金は4億9800万円。従業員数は520人で、近々上場するのではないかと噂されている。

そのアソビモが立ち上げるサービスは、「電子書籍を出版社から購入でき、自分が所有する電子書籍を『リセール品』として他のユーザーに売ることができるサービス」であり、「このサービスが画期的なのは、ユーザー間の取引であるリセール品売買においても、出版社に収益が入るようになっている点だ」という。

たとえば、現在Amazon/Kindleで電子書籍を買った場合、その本はKindle端末やKindleアプリでしか読むことができないし、紙の本とは違って電子書籍をリセールすることはできない。

しかし、『アソビマーケット』で買った電子書籍は、『アソビマーケット』でリセールすることができる。しかも、その場合、出版社や著者に利益が入るようになっているという。

(参考:アソビマーケットとは?登録方法・使い方をゲーム実況YouTuberが解説

ブックオフやAmazonの中古品は、ブックオフやAmazonだけが利益が出る仕組みになっている。たとえば、Amazonマーケットプレイスでは、文庫本などを「定価1円+送料」という設定で販売していたりする。この場合は、総額から手数料をAmazon社が受け取る。ブックオフの場合は、安く仕入れてそれなりの値段を付けて販売している。

(参考:Amazonで「1円の古本」と「257円の送料」の組み合わせがなくなった理由と、その影響で古本が値上げになった件

いずれにしても、出版社や著者には、何の利益も もたらさない。

アソビモは、初版の時に利益をもらうだけで、リセール時には利益は取らないようだ。だから、再販本の値段は、出版社などに支払う料金に売り手の利益を上乗せした価格という。

ブロックチェーンがもたらす新しいデジタルコンテンツの流通

こうしたことが可能になったのは、「ブロックチェーン」という技術による。

デジタルコンテンツは複製が簡単なため、2次流通になじまず、また、海賊版が横行する世界でもあった。しかし、ブロックチェーンの技術により、コンテンツを複製できないように管理でき、しかもそれぞれを個別に管理できるようになる。その結果、「メルカリのデジタルコンテンツ版」ともいえるサービスが可能になったという。

これは、《デジタルコンテンツの流通》という新しいマーケットの創造でもある。

私たちは、ストリーミングで動画を観たり、アプリを通してデジタルコンテンツを購入し鑑賞したりしている。それはある意味レンタル鑑賞権利を購入したにすぎず、厳密な個人所有ではない。いわば、今はやりの言葉で言えば、《サブスクリプション》による利用権の購入ということである。デジタルコンテンツとして個人所有できないがゆえに、個人所有できるデジタル海賊版が横行することにもなるともいえる。

ブロックチェーンが海賊版対策になる?

アソビモは、『デジタルコンテンツを再販する唯一のプラットフォーム構築』に向けて、ICOで資金調達を2019年2月に開始した。ICOとは「Initial Coin Offering」の略。この場合のコインというのは仮想通貨のこと。取引所に上場する前の通貨(コイン:デジタルトークン)を販売して、資金調達する行為のことをICOという。IPO・新規公開株の売り出しに似ている。

(参考:ICOに関する記事一覧|ビットコイン予備校

ほぼ時を同じくして、「ANGELIUM」(エンジェリウム)というICOプロジェクトが立ち上がった。世界初のVR技術を搭載したアダルトのセクシープラットフォームの構築をブロックチェーンを使って実現しようとしている。

(参考:Angelium(エンジェリウム)ICO概要【最新情報】上場・購入・評判は?アダルト業界初の仮想通貨!

このプロジェクトが面白いのは、いまもっとも違法アップロードが横行していて存続の危機にあると言われているAVの世界を、ブロックチェーンとVRを使って救おうとしているところだ。

アソビモも、ブロックチェーンを使って、デジタルコンテンツの流通を実現しようとしているのだ。

おわりに

アソビモのサービスは、電子書籍そのものの端末依存をなくし、共通のプラットフォームでさまざまな電子書籍が購入できるようになるサービスを目指している。アソビマーケットで売れるのは、とりあえずはコミックなどが中心となるものと思われるが、アソビモはジャンルを広げていこうとしている。これからの動きを注目しておく必要があると思われる。

アソビモは、このビジネスの立ち上げで、いくつかの特許を申請しているそうだが、デジタルコンテンツの流通においては、無料で利用可能にしていくようだ。そうすることによって、流通市場が拡大していくことを望んでいると考えられる。

仮想通貨やブロックチェーンなどは出版界から遠い世界で、せいぜいよく売れるビジネス書のテーマだと思われていたかもしれない。

だが、すでにデジタルコンテンツの流通の世界では、その利用が始まろうとしている。それは、ひょっとすると、電子書籍の販売と流通に革命を起こすかもしれない。ブロックチェーンの技術についても、出版界や編集プロダクションも勉強しておく必要がありそうだ。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)