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エディットお役立ちレポート

2019-06-20 第14期第2回AJEC「編集教室」に参加して

【講義内容】◎著者開拓力「自分の感動と、『売れる』をつなぐ──新人著者の見つけ方」

講師:池田 るり子(いけだ るりこ)氏
サンマーク出版 第一編集部 副編集長
【講師略歴】株式会社サンマーク出版第一編集部 副編集長。2006年入社後、営業部、講演会事業部(TB編集部)を経て、編集部に異動。主な新人著者の担当作に『コーヒーが冷めないうちに』(85万部)、『この嘘がばれないうちに』(23万5000部)、『思い出が消えないうちに』(13万部)、『こうして、思考は現実になる』(26万部)、『あなたは半年前に食べたものでできている』(10万部)、『一歩を超える勇気』(10万部)などがある。

講演内容はAJECのアーカイブにてご確認ください。

池田るり子さんは、小説を作りたいと言っていたが、どちらかというと実用書の編集者である。彼女は、実用書の編集者を中心にした「本日、校了!」(https://honjitsukoryo.com/)というWebマガジンを発行している。

今回の講演は、主として実用書をどうつくっていくかという話である。企画を考え、それを通し、著者と一緒に本をつくり、それを売りに出すのが編集者の仕事であるが、自分の「感動」を大事にして本をつくりあげていくというのは、前回の講演者の箕輪厚介さんとよく似ていると思った。パフォーマンスの仕方がまったく逆のようなイメージだが、本づくりの原点は同じような気がした。

箕輪厚介さんは、ビジネス書であり、しかも著者が著名人であり、池田さんの場合は、実用書で、しかも新人著者が中心とかなり違ってはいるが、自分がやりたいと思って本をつくっていることは同じだと思われる。それが、多分、「自分の感動と、『売れる』をつなぐ」ということだと思った。

<講演概略>

1)企画のつくりかた
2)著者を見つけるときに大事にしていること
3)新人企画を会社に通すコツ
4)依頼の仕方
5)売り方を考える
6)赤字を入れるときのポイント

●新人著者と本をつくるとは、どういういうことか

メリットとしては、他の本のことは考えなくてもよいので、内容に気を遣わなくてもよいし、PRもしやすい。また、著者にも気合いを入れてもらえる。

その反面、企画を通しにくい。特に売れる数字が見えにくいので、上司が判断しにくい。また、仕事がしづらいことがある。著者が大物だと、企画がすっと通ることがあるが、新人の場合は企画力以上のものが必要になってくる。

●企画を立てるときに気を付けていること

著者より前に、企画を上司に納得させること必要がある。そのために内容として以下の4つを気にかけている。

@「勝てるジャンル」を探す

勝つためには、「売れているし、新しい」内容か、いままでには「ない」内容であるかのどちらかしかない。

売れそう = 売れたことのあるジャンル×新しい内容×(広告)

一応、実用書で売れているジャンルとしては、「お金」「ダイエット」「健康」「片付け」「感動」「日本語」「動物」などがある。

A新しいことを言ってくれる

新しいことでちょっとは知っているけど、知らないことを教えてくれていることが大事。よく言われていることをぶつけてみて、違うところがあるかを探す。

B「自分の」悩みを解決してくれる

自分だけではない、独りよがりにならないために、自分とあと一人の本音が重なれば本づくりを目指す。

ペルソナを設定して提案することが自分はできないので、自分の本気を基準にして提案する。

C「やってみたい!」と思えるもの

こういうことをしたらいいよと提案したとき、それをやりたいと思えるかどうか。正しいと分かっているけど、やりたいとは思えないときは、どうしたらよいか考えてあること。

●こういう本をつくるために

@装丁を考えるときに、次の点を考慮(ラフをつくってみる)
A著者を次の点で気をつけて見つける
B著者に依頼するときに大事にしていること
C本の内容は、売り方「から」考えること
D赤字を入れるときに注意していること(校正上)

<質疑応答>

@新人をどこから見つけてくるのですか。

→知っている著者から紹介してもらう。また、その著者と一緒に講演をしていた人に依頼することもある。ネットで探すときは、自分のタイムラインだけ見ていては偏るので注意。自分がよい人だと思っている人が推薦している人だとよい。また、ブルーバックスで書いている専門家に、一般向けの実用書を依頼することがある。

Aラフをつくっているそうですが、実際に装丁の依頼をするときどうするのですか。

→装丁のラフは特別見せない。こうして欲しいということを明確に伝え、あとは装丁家を信頼して任せる。そのとき、売り方の雰囲気などは伝えるようにしている。自分には装丁のセンスはないので、お任せしている。

<感想>

本をつくるとき、「自分が読みたい本をつくる」のか、「自分以外の人が読みたい本をつくる」のかということをよく考える。あるいは、「自分が読んで面白い内容だから、たくさん売る」のか、「たくさん売るために、本の内容を考える」のかということでもある。

池田るり子さんは、どちらかと言えば、自分の「感動」を「売れる」につなげようとしているわけで、いわば一般大衆がどんなものを読みたがっているかを見つけて、そこに向かって本をつくるという本づくりでない。池田さんがつくってきた本は、あくまでも池田さんが知りたかったこと、読んでみたいと思っていたことが書かれている本だ。いわば、企画づくりが、投機のようになっていないところが、素晴らしい。

この点は、前回の箕輪厚介さんとよく似ている。ビジネス書と生活実用書と分野が違っているが、本づくりの原点は同じだと思う。だから、二人とも、単なる黒衣に終わらない。本をつくる前や、つくってからも自分の個性と一緒にPRしたりしている。それが、池田さんの場合は、「本日、校了!」(https://honjitsukoryo.com/)というWebマガジンでもある。

株を買うとき、ケインズは、投資と投機とを区別して、「美人投票」で1位を獲得する美人を当てることが投機なのだと言っている。つまり、この場合は、自分が「美人」だと思うかどうかという問題ではなく、みんなが「美人」だと思う人が「美人」なのだ。つまり、みんなが買いたいと思っている株を事前に予測し、それを買うということが投機というわけだ。(市場の心理を予測する活動としての投機──ケインズ著『雇用・利子・および貨幣の一般理論』第4編第12章五の(六))

これは、読者対象を層別して、その中の典型的な人物をペルソナとして設定し、そのペルソナがどんな行動をするかを考えて、本の内容を考えるということと似ている。かつては、こういうことを考えて売れる本をつくっていた時代があった。しかし、現在は、一人一人が違っていて、層別に分類したり、みんながどんなものを望んでいるか分析したりしても、どんなものが売れるか分からない時代になってきた。そういうものは、多分、AIなどによって分析するしかない。もちろん、ときどき、天才的な感覚をもった編集者が登場する場合がある。

しかし、普通の人である我々は、同じ時代に生きている自分の感覚を信じて、そこで「感動」するものを見つけて、自分の感動や思いを基準にして本づくりをしたほうがよいのではないかというのが、池田さんの本づくりの基本になっていると思った。そして、その自分の「感動」を、「売れる」にどうつなげていくのかが、いわば編集のテクニックになっていると思う。そして、それが池田さんの場合は、見事に成功していると思った。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)