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エディットお役立ちレポート

2019-10-24 AJEC第14期第5回「編集教室」に参加して

【講義内容】◎校正力「校正の基礎とIT時代の校正力」

講師:松風 美香(まつかぜ みか)
毎日新聞校閲センター(2011年入社)
【講師略歴】毎日新聞校閲記者。2011年、校閲記者として入社。東京本社に配属されて以来、一貫して校閲の仕事をしている。7年間、ニュース面、くらし面などを担当した後、現在は文化・芸能面や書評面、毎日小学生新聞を主に担当。

講演内容はAJECのアーカイブにてご確認ください。

松風さんは、「校正=校閲」と考えているような気がする。IT時代というタイトルからもわかるように、松風さんが最初に目にするのは、デジタル化された原稿だ。モニター校閲から大刷校閲というように言っていたが、モニター校閲もA4の紙にプリントアウトされたモノを使って校閲をされている。ここには、本来の意味の校正(印刷したもの[=校正刷り]を原稿とくらべあわせて、文字・色などのあやまりなどを正すこと。──三省堂国語辞典第七版より)はない。そういう意味でも、IT時代の校正とは、ほとんど校閲(読んで、文書のあやまりを調べること。──同上)と一緒だと考えられる。

そして、文書の誤りが、IT時代では従来の文書とは違ってくる。松風さんは、新聞社の校閲部に所属して、現在は主に、夕刊の文化・芸能面、書評面と、毎日小学生新聞の校閲を行っているそうだが、その中で気付いたことなどを中心に、IT時代の校正力の基礎についてとても分かりやすく、講演された。

詳しくは、AJECを参照してもらうことにして、ここでは、かんたんな講演内容の概略と感想を述べる。  

<概略>

@自己紹介
A校閲とは
Bなぜ重要?
C実際の仕事
D実技
E解説
Fまとめ
G質疑応答

<感想>

松風さんは、校正とは「誤字脱字をチェックしたり漢字表記を揃えたりして文章の体裁を整えること」であり、校閲は、「さらにふみこんで意味や内容を調べ、指摘すること」というように指摘されているが、デジタル時代の編集作業の中には、すでに原稿照合などという作業がなくなってしまっているので、おそらく、現在では、「校正=校閲」と考えたほうがよさそうだ。

マスコミの特に新聞社の校閲記者の場合は、限られた時間の中で校正を終えなければならない。校正は、書かれている内容について疑問を持つところから始まるのだが、それを限られた時間のなかで確認しなければならない。そんなときの心構えとして、「線を引いて、ときには(間違えやすいところは)1文字ずつペンで押さえながら読むこと」「諦めず、労力を惜しまず調べること」「何も信じず、疑い深くなること」ということを強調された。

そして、校閲は、「新聞/出版物の信頼性を保つため」にあるのであり、出版物にミスがあると、訂正・お詫び、クレーム、刷り直し、回収、内容すべてに疑いが生じる、読者が読み物に集中できないなどということが起こることになる。ここで、松風さんは、自戒を込めて、いくつかの見逃されたミスを紹介された。

Cの実際の仕事についてでは、新聞発行までの流れの中のモニター校閲(初校)と大刷校閲が校閲記者の主な仕事で、そのときに使っている7つ道具を紹介された。

また、新聞社の場合、読みやすいよう、表現を統一するルールが存在しているのが、一般の出版物とは大きく違っていると言われたが、この点は教科書や教材会社の場合とよく似ていると言える。

インターネット検索では、信頼性の高いサイトとして、「毎日ことば 調べものリンク集 」と会員制の有料データベース「JapanKnowledge 」(個人利用は月額1500円)を紹介されていた。前者は、無料で便利、後者は有料だが充実したサイトである。(出版物に内容によっては、期間を限って利用するとやすく利用できる。エディットでも活用している)

時間がないときは、「固有名詞」「数字」「差別表現」などに絞って校閲することもあるそうだ。

次のようなよくある間違いの具体例はとても役に立つ。

途中、実技があった。2019年9月29日付けの大刷紙面を校閲するというものである。15と言う限られた時間だったが、なかなか難しかった。誤りは27箇所あったようだが、私は半分もできなかった。みなさん似たような結果だったようだが、後で、問題の箇所を見ると、そんなに難しい間違いではない。時間をかけ、丁寧にチェックしたら、私でも全部見つけられないことはないと思われた。校閲というのは、限られた時間をいかに有効に使い、効果的に見るかということが大事なようだ。

最後に、大事にしたいこととして、「読者の紙面への信頼を守る」ということと、「読者の気持ちに寄り添う」ことをあげられた。

「誤り」ではないけれども、表現には読者の気持ちを考えて配慮する必要がある例として、「性同一障害者」の性別をどう表現するかを取り上げ、その場合、「男性」「女性」という言葉ではなく「当事者」という言葉を使うというような配慮をした例を述べられたが、校閲記者の真骨頂を見たような気がした。

校閲部は、最近、テレビの「校閲ガール」の影響か、人気のある部署になっているそうだ。松風さんの語りの中に、やっている仕事に対する誇りのようなものがあり、それがとても爽やかな印象だった。

この講演を聞いたからといって、明日からすぐにスゴイ校正・校閲ができるというわけにはいかないが、校正・校閲のときの心構えとツールについてはすぐに活用できそうだ。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)