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エディットお役立ちレポート

2019-12-03

出版の世界でもクラウドファンディングが始まる!

−−「新たなチャレンジを応援しよう」という言葉の上に、プロジェクト名と写真が搭載されている。その下に、残り時間や集まっている金額、達成率が示されている。もちろん、プロジェクトの詳しい説明があり、支援金額がコース別に掲載されている。ある意味では、プロジェクトでつくられる商品の予約販売をしているとも言えるが、支援者は面白い試みに投資する気持ちでプロジェクトに参加しているようだ。こうしたプロジェクトがいくつも並んでいる。

これは何のことかというと、今話題のMakuakeのサイトである。

Makuakeは、日本でもっとも成功しているクラウドファンディングである。映画「この世界の片隅に」というアニメーションがMakuakeのクラウドファンディングを利用して成功したのは、よく知られている。ベストセラーになった、Makuakeの社長の中山亮太郎著『日本最大級Makuakeが仕掛ける!クラウドファンディング革命──面白いアイデアに一億円集まる時代』(PHP研究所/2017.10.20)を読みながら、このサイトにアクセスすると、クラウドファンディングとMakuakeの成功した秘密がとてもよくわかる。

「新文化」2019年8月1日号に、「講談社はこのほど、クラウドファンディングを通じて科学研究者の研究費調達やアウトリーチ活動を支援する『ブルーバックス・アウトリーチ』において、立命館大学とパートナーシップを結んだ」という記事が掲載された。

ブルーバックスの篠木和久編集長によれば、「『人類と気候の10万年史』(ブルーバックス)の著者である中川毅氏の研究をクラウドファンディングで支援したいと話していたところ、それが大学側に伝わり、会社と大学間での取組みになった」とのこと。

内容は、第1弾として「新薬の可能性は『毒きのこ』にあり。創薬の未来につながるデータベースをつくりたい!」(薬学部・井之上浩一准教授)、「数奇な運命をたどった『酒呑童子絵巻』を修復し、みんな≠ナ共有・活用したい」(文学部・赤間亮教授)、「ミクロの世界との遭遇 触覚をもったマイクロロボットハンドがあなたの触覚とリンク」(理工学部・小西聡教授)、「年縞に刻まれていく地球の歴史。その瞬間を水中カメラで記録したい!」(総合科学技術研究機構・中川毅教授)の4プロジェクトを始動したという。

実は、講談社では、7月2日に科学新書レーベル「ブルーバックス」の名を冠したクラウドファンディングサービス「ブルーバックス・アウトリーチ(BBO) 」をスタートさせたていた。このサイトに行くと、実際にそれぞれのプロジェクトの内容と、支援の状況がリアルに分かるようになっている。  

BBOの特徴 は、一般的なクラウドファンディングと違って、商品やサービスの販売元は講談社が行うというところにある。研究者は、その分、研究に専念してもらうことになる。もちろん、BBOは、「通常のプロジェクト」と「寄付型プロジェクト」と組み合わせて運営されることもあるようだ。

クラウドファンディングでよく使われる用語に「All-or-Nothing型」と「All-In型」というのがあるが、前者は、プロジェクトが成立したときに支援者の支払いが発生するものであり、後者は募集期間が終了したら支払いが発生するものである。また、後者は、一人で寄付が成立すれば、プロジェクトは成立し、支払いが発生することになる。こちらは、「寄付型プロジェクト」の場合が多い。BBOの場合は、前者が中心であり、プロジェクトが成立したとき支払いが発生する。

BBOでは、プロジェクト終了すると本が出版され、それが支援者に配布されることになる。こうしたクラウドファンディングを「購買型クラウドファンディング」と言うこともある。

MakuakeやBBOという取組は、いいアイデアがあれば、資金がなくてもその規格が実現できる可能性があるということをしめしている。そして、そこに参加できるのは、大手企業だけという誓約もない。本というのは、売れた本がいい本だというのがこれまでの常識だったが、これからは、いい本だったら資金なくても、本として出版できるということでもある。Makuakeの中山社長によれば、テストマーケッティングができるということで、事前にいかにその魅力をアピールするかにある。このことによって、多分、本づくりの仕方が変わってくる。

また、Makuakeの中山さんが強調されていたが、日本の企業の中にいいアイデアやシーズはたくさんあるようだ。出版界の場合は、「本当にそれが売れるのか」という一言で、企画がポシャることがよくある。特に出版不況の中、それが増えているようだ。それらの規格が甦るのも、こうしたクラウドファンディングは、役に立ちそうだ。

現在、紙の本の売れ行きが低迷し、Web上にいろいろある投稿サイトで成功しているコンテンツを本にすることによって、売上を確保しようとしている出版社が多い。BBOの場合は、その逆を行おうとしているとも言える。いいプロジェクトが立ち上がり、研究が順調に進めば、それは、結局売れる本にもつながるということになる。そして、支援者の声がそうした研究の応援になる。そういう意味では、科学コンテンツが中心のブルーバックスにはよいのかもしれない。

実用書でこうしたものを実現しようと思ったら、『実験思考』のような本づくりを参考にしたプロジェクトがよいのかも知れない。『実験思考』では、電子書籍を無料で提供し、読んだ読者に自由に価格を付けさせて大成功した。その場合は、価格の額によって、いろいろなサービスを提供するようになっていた。これも、ある種の、クラウドファンディングである。(この本は、箕輪厚介さんの担当した本である)つまり、現在では、多種多様なクラウドファンディングが立ち上がっているということでもある。

もし、紙の本ではなく、デジタルコンテンツとして販売されるのが主になると、つまり電子書籍が本の主流になるとすると、もっと、自由自在にプロジェクトを立ち上げることが可能になると思われる。「紙に印刷し、製本し、物流に乗せて、読者の手元の届ける」というとてもコストのかかる過程が合理化されたら、本づくりがどう変わっていくのかまだ、よくわからないことが多い。しかし、クラウドファンディングによる本づくりは新しい可能性を拓く道になるかもしれない。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)