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エディットお役立ちレポート

2019-12-03

投稿サイトとデジタルコンテンツとしての小説の流通

現在、小説やマンガに特化した投稿サイトが賑わっている。かつては、こうした作品は、同人誌で発表するか、出版社に直接持ち込むことが普通だった。しかし、いまでは様々な投稿サイトが開設され、発表の場となっている。そして、そこから紙の本になる場合も増えてきた。

現在この他、新しいサイト

などがある。

現在これらのサイトの特色は、【のべなろ】」というサイトの「WEB小説投稿サイトおすすめ7選比較 」や、【あした話せる 嗜好品メディア、ルークス。】というサイトの「小説投稿サイトはどれがおすすめ?有名9サイトを徹底比較! 」などが詳しい。もちろん、マンガ投稿サイトもたくさんある。小説サイトよりこちらのほうが多いようだ。これらの投稿サイトは、作品の発表の場であり、そこにたくさんの読者を持った作者がいたりする。すでに、そこでは、これらの作品が「電子本」として読まれていて、一定の読者を持っている。

つまり、電子書籍はまだまだと思っている人が多いと思われるが、実は、膨大な量の電子書籍がデジタルコンテンツとしてネット上には存在していると考えるべきだ。小説投稿サイトやマンガ投稿サイトに存在しているコンテンツは、ある種の電子書籍だと言える。それを楽しみにして読んでいる読者が多数存在しているのだ。そこでは、紙の本は、いわば、よく読まれて、たくさんの読者を獲得してぎる作品がもらえる勲章のようなものだと思ったほうがいいのかもしれない。

また、投稿用のアプリもいろいろあるようだ。小説投稿サイトの小説書きアプリについては、同じ【ルークス】のサイトの「小説を書くアプリはどれがいい?Android・iPhone・iPad別に紹介 」で詳しく取り上げられている。最近びっくりしたのは、小説をスマホで書くのが普通になっている人たちがいることを知ったことだ。つい最近デビューした高校生作家の日部星花(ひべ・せいか、17歳)は、図書館で本を読み、自分も書いてみようと考えて、スマホで小説を書いたという。大体、1日1、2時間かけて8,000字ぐらい書くという。(新文化/2019年8月29日号記事より)

こうした状況を背景に、ピースオブケイク社長・加藤貞顕は、ダイヤモンド社をやめて、2014年4月に「note 」を立ち上げた。加藤貞顕と言えば、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)の編集担当者として有名である。

彼も、「note」を立ち上げた理由として、出版界自体がシュリンク(縮小化)しはじめたことへの危機感があり、電子書籍にかけてみようと思ったようだ。「新文化」のインタビュ−記事の中で、「アスキー、ダイヤモンド社で編集に従事していた加藤社長がなぜ、ピースオブケイクを設立し、noteをつくろうと思ったのですか。」という質問をされて次のように応えている。

周知の通り、ネットが普及し、出版界がシュリンクしてきたことを肌で感じていたからです。街を歩いていても、電車に乗っても、ほとんどの人がスマホをみていますよね。だったらそこにコンテンツを掲示し、時には課金する仕組みも取り込む方がいいと思い、独立してnoteを開設しました。でないと、コンテンツ産業が縮小の一途を辿ってしまうという危機感がありました。

(新文化/2019年9月5日号)

加藤さんが「note」を設立したことによって、多くのクリエイターが、かんたんに作品をつくり、発表できるようになったという。カテゴリーは、マンガ、コラム、小説、写真、サウンド、ビジネス、ライフスタイル、テクノロジー、エンタメなどがある。「note」は必ずしも売るためのサイトではないが、いちおう、100円から50000円までの価格で売ることもできるようになっている。

健康やお金に関するコンテンツ、小説、日記、企業情報を詳細に分析した資料、なかにはプログラムを販売する人もいます。『本』として出版することは難しいコンテンツでも、ネット上では、必要だと思う人が対価を支払ってくれてビジネスになる。noteは売ることを目的にしていませんが、そんなこともできることが重要なのです。

我々のミッションは『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする』です。『誰でも』『続けられる』ビジネスって、前述した通りハードルが高いのです。継続して執筆できる人はひと握りです。それでも、コンテストなどを通じてキャリアアップできるようにする役割も担えたらと思っています

(同上)

「note」がここまでくるには、それなりの期間が必要であったが、利用者数は今年になって1000万人を超え、投稿される作品は1日当たり1万件になるという。いわば、メジャーなサイトになり、出版社やテレビ局などからも注目されるようになり、出版や映像化のオファーもくるようになり、そのことがまた投稿者を増やしていくというプラスの循環にはいる。

こうしたことを背景に、主としてコンテンツを販売する企業向けに、「note pro」を提供し始めた。ランニングコストは、月50000円で、初期設定は無料なのだそうだ。自分のところで、オウンメディアを持たない出版社だけでなく、いろいろな企業からも利用が始まっているようだ。

いま、多くの企業は『この商品はこういう発想でつくられ、こんな人たちが、こんな使い方をするとライフスタイルがこんな風に変わります』と、プロセスやストーリーを伝えようとしています。

それで成功したのがアップルでした。社長自らがプレゼンして、映像化して配信し、自社の店舗で販売しました。その映像も店舗もメディアです。これを他の店舗やECサイトで売ると、単なるスペック競争、価格競争にしかならないのです。

アップルの商品価格は同じスペックの商品に比べて約2倍。それでも同社のブランド力から数多くのヒット商品を創出してきた。ダイソンの掃除機もウェブでその機能をアピールし、直販から始めました。

(同上)

いちおう、加藤社長も、商品の付加価値として、商品にストーリーを持たせるということを大事にしているようだが、そのストーリーをつくること自体を「note」でつくらせようとしているのかもしれない。ストーリーを持っている小説に更にストーリーを付け加えるというのはおかしな話のようだが、それはある意味では作者や編集者をPRすることである。この流れは、出版物にもあてはまりつつあるようだ。箕輪厚介のように、自らが情報発信して、ある意味では、自分でつくった本に内容とは別の物語を付けて売っていると考えることもできる。

確かに、本も商品である。そして、出版の世界では、それが商品である限り、コスト割れしていてはいずれ出版の世界からはじき出されてしまう。文化としての本という捉え方と、商品としての本という捉え方は、一見対立しているようだが、Webの進化によって、価値ある文化であれば、やがて、それは出版界にも必要とされるということになって来つつあるのかもしれない。むしろ、そうでないと出版されなくなるかも知れない。

いままで述べてきたことは、これから書かれていく小説についてだが、逆な事態も発生している。LINE(株)は今年4月、小説プラットフォーム「LINEノベル」をスタートさせた。すでに、2013年に「LINEマンガ」をはじめていて、出版関係者の間で注目を集めていた。どちらも専用のスマホアプリによってコンテンツの提供がなされている。LINEによる小説の提供サービスは、すでに2013年から始まっていたが、今回の専用のスマホアプリによる「LINEのベル」での展開では、コンテンツの提供だけでなく、13社の出版社と提携して、新人作家の作品の書籍化もサポートしている。

参加出版社は、現在のところ、KADOKAWA、河出書房新社、講談社、実業之日本社、集英社、新潮社、スターツ出版、双葉社、宝島社、東京創元社、文藝春秋、ポプラ社の13社である。

ここでも、投稿することの他に、スマホで小説を読むということが行われている。そして、参加出版社、古い作品だけでなく、新作書き下ろしの作品も提供し、多くの読者を獲得しているようだ。この「LINEノベル」についての、「新潮文庫nex」の高橋裕介編集長の言葉は象徴的だと思われる。

多くの人がスマホ中心の生活をしているにもかかわらず、小説をアプリで読む人は少ない。このままだと小説を読む習慣が消えてしまうという思いがありました。しかしシステムの構築や収益などを考えると、自社で小説アプリを開発、配信していくのはハードルが高い……LINEからアプリを含む小説プラットフォームが開設されたことは大きいです。

(新文化/2019年9月18日号)

新聞を読まない人や、テレビを観ない人がだんだん増えているように、紙の本を読まなくなる人たちもだんだん増えていくのは間違いない。そして、Webを中心に、デジタルコンテンツとして、小説が流通していくようになるもまた確かなことだと思われる。実際に、私の周辺にも、紙の本を読まないことはないが、最近、紙の本の小説は読んだことがないという人が、けっこういる。もちろん、彼や彼女たちは、決して小説が嫌いだというわけではなさそうだ。

私たちは、Web時代のなかで、もう一度、小説の編集とは何か、小説の出版とは何かを考え直してみる必要がありそうだ。

(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)