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エディット通信(2021年長月号)

■酒井京子氏 『本の力 私の絵本制作秘話』(童心社)を読んで

2021.8.31

今回は童心社の会長,酒井京子氏の『本の力 私の絵本制作秘話』(童心社)を紹介させていただきます。

酒井京子さんは現在,童心社の会長を務められています。1969年に入社され,数々の絵本の制作現場に立ちあわれ,編集者,編集長, 代表取締役という任務を全うされました。

本書は,6章からなる編集者としての貴重なエピソードがまとめられています。酒井さんの実直なお人柄が随所に見つけ出すことのできる素敵な本です。

私は,最初の『おしいれのぼうけん』誕生秘話を興味深く読むことができました。

入社3年目の酒井さんと『おしいれのぼうけん』の文章ご担当の古田足日さん,絵ご担当の田畑精一さんによって作り上げるまでの, 貴重なエピソード満載の内容です。

そのなかの一つを紹介します。


ある程度,文章と絵が仕上がり,紙面をまとめあげるための四泊五日の合宿を伊豆の温泉宿で行ったときのことです。 絵本に入れる文章と絵の大きさとのバランスをとるために議論をするのですが,お互いに「文章は削れない!」「絵をもっと大きくす る!」と譲らず,間に入った酒井さんは大いに困ります。

そのときのことをこう回想されます。

「困ったことはふたつあった。ひとつはこのまま本ができなかったらどうしようということ。もうひとつはお金のこと。会社からは三 泊四日分のお金を持たされていて,とうに足りなくなっていた」とのことです。
その当時の緊張感がよみがえります。しかし,こんなことも書かれています。
古田氏と田畑氏との,譲歩なきやりとりのなか,とりあえず寝ることにして,そして迎えた翌朝,二人がいつものように朝食を食べている姿を見て,「一晩寝るって大事だなと思った」と書かれていました。


酒井さんの,緊張感のなかの冷静なものの見方に,どこかからっとした明るさを感じるのでした。

「編集上のノウハウは教えたり教わったりできるが,編集者としての生き方は自分でさがし,考えていかなければならない」と言われる酒井さんは,長年付き合いのあった古田足日さんから,編集者としての生き方を教わったと書かれています。
私も,人生の先達や先輩編集者から教わってきた≪編集者としての生き方≫について,今一度振り返り,思い直したいと考えているところです。

★この本の詳細は,下記をご参照ください。

https://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494017409