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エディットお役立ちレポート

2021-4-22

オンライン講座「凡人でもヒットを出せる企画術」

講師:大坂 温子(おおさか あつこ)氏  朝日新聞出版・書籍編集部

【講師略歴】
1985年生まれ。2012年に朝日新聞出版入社。主な担当書籍に、18万部突破した『天才はあきらめた』(山里亮太)のほか、シリーズ累計75万部を突破した『頭に来てもアホとは戦うな!』(田村耕太郎)がある。同書は2018年オリコンビジネス書ランキング1位を獲得し、2019年ドラマ化。そのほか『「やりがいのある仕事」という幻想』(森博嗣)(9.3万部)、『朝日ぎらい』(橘玲)(2019年新書大賞入賞)などを担当。

 今回は、編集講座のLコースの第2回目で、朝日新聞出版でベストセラーを幾つも出している大坂温子さんの登場です。ここでは大坂さんの講座の流れ・内容を紹介します。

講義内容

<参考> おすすめ本4冊

感想

 今回の講師の大坂温子さんは、書店サイドでも売れる本をつくっている編集者として有名になっているようです。紀伊国屋書店新宿本店で、大阪さんの編集した本のフェアをやっているほどです。朝日新聞出版では、ノルマは特にな無いそうですが、年間8~10冊ほど本をつくるそうですので、この間、かなりの点数をつくっていることになります。大坂さんは、読者と等身大の自分というものを自覚して、自分が面白いと思う本をつくってベストセラーを出している編集者であり、編集者としてのタレント性も持っている人でもあります。大坂さんは、はじめはKKベストセラーズに入社し、4年ほどしてから、朝日新聞出版で募集があったので、応募して転職したそうです。かなり、行動力のある編集だと思います。 今回の講演は、「凡人でもヒットを出せる企画術」というタイトルからも分かるように、自分を凡人と規定していますが、「凡人」というところを強調されているところに、読者をつかむ才能があるのだと思われます。これは、二月のAJEC編集講座で話された谷綾子さんとも共通していて、自分の「凡人」としての感覚の普遍性を信じているのだと思われます。大坂さんはネットなども有効に活用されていて、好奇心が旺盛であるようです。ただ、KKロングセラーズと朝日新聞出版の違いは、私には明確には分かりませんが、出版物の印象として、朝日新聞出版のほうが、著者とテーマを重視しているような気がしています。

 今回、語られた内容は、著名人の役立つ言行録ではなく、地味ながら本が好きな編集者のあり方として考えるべきだと思います。最初から、ベストセラーを出すことを大きな目標に編集者になった大坂さんが、結果としてベストセラー編集者になれたのは、大坂さんの著者やテーマへの感覚の鋭さだと思われます。その意味では、朝日新聞出版が大坂さんには合ったのだと思われます。面白いテーマを面白い本にできる著者と、どう出逢うのかが企画のポイントです。そのために行っている、「一日一つ企画メモ」を書くという作業は、いろいろな意味で編集者の企画力を向上させることに役立っているのだと思いました。大坂さんが教えを請うたベストセラー編集者たちは、「編集者は、自分がまず面白いと思うものでなければダメだ!」と言っていますが、それは、ベストセラーをつくるためだけでなく、本づくりの基本だと思われます。そして、「凡人」であるからこそ、自分の感覚を信じて本をつくると、結果として、それがベストセラーになり得るということを言っているのだと思います。もちろん、いろいろと本が売れるようになるために確認作業はされていますが、自分が面白いと思うものは、多くの読者も面白いと思ってくれると信じているようで、大坂さんは、自分の感覚にかなり自信を持っていると思われました。企画の立て方について言えば、著者とテーマをどう選ぶかということが、ヒットに結びつく最大のポイントになるということを大坂さんは強調されていましたが、著者とテーマの選び方は、まさしく編集者の感覚としか言いようがありません。もちろん、編集の仕方、読みやすい本づくり、タイトル、PR、販売法のなどがヒットには必要です。そして、大坂さんが言うように「5万部までは編集者の力で、それ以上はみんなの力」というように考えて行動することが大切なのだと思います。要するに、毎日企画を立て続けるとか、興味をもってWebを見るとか、ベストセラーを常に見ておくとか、日常的な著者やテーマおよび本の形に対する感覚を磨いておくことというのは、編集者として企画を立てるためには、当たり前のことだと思われます。そして、そうした当たり前のことが十分にできれば、続けられれば、凡人でも、いや、凡人だからこそ、ヒットが出る本をつくることができると言っているように思いました。