No.01 地方の編集プロダクションの生き方
(エンタテインメント業界就職 ROAD4『出版・編集』大栄出版発行より抜粋)
::: 項目一覧 :::
●エディットの特徴はトータルな編集作業にあるようですね。
●教材の編集はそれぞれが専門的になっていますね。
●地方ゆえの特色ということでしょうか。
●DTPを使っての編集作業も御社の特徴になりますね。
●総合的に編集技術を覚えたい人には絶好の会社ですね。
●編集プロダクションに入りたい人に望む言葉を……。
●小林さんは専門学校で教えていらっしゃったのでしたね。
●エディットの特徴はトータルな編集作業にあるようですね。
小林 そうですね。社内で編集・制作の全部をまかなえるようにしています。
会社は大きく分けて,教材編集部門、一般書編集部門、DTP・イラストデザイン部門の3つに分かれています。
教材や書籍関係では東京、大阪方面の出版社が多いけれど、情報誌は主として名古屋の会社が多いですね。受注の形は,いわゆる
パッケージ型が多く、企画、取材、編集、制作の全部をこなして、できるだけ製品に近い形で納品する、というシステムですね。
パッケージ型の会社でも、ある部分を外部に出す方法を採っているところもあるけれど、私のところは内部にイラストレーターも
いますし、制作はDTPを使用して、できるだけ社内で全工程を処理しています。DTPを早くから導入し、作業の一本化、社内
化、デジタル化を図ってきました。

●教材の編集はそれぞれが専門的になっていますね。
小林 そうです。自分の強い分野を伸ばしていくことは非常に大切であると思います。教材のプロダクションは数学だとか英語だ
とか社会だとか、それぞれ得意な分野をお持ちのところが多いようです。とくに東京ではそうでないとやっていけないと思います。
しかし、地方では逆にそれでは成り立たない。幅広くやらないと生きていけないのです。もちろん私があまり1本に絞ることを好
まない性格のせいもありますが、頼まれた仕事は原則として断らない主義にしております。仕事が入ったらそこで組み立てを考え
ます。エディットの教材部門は5教科体制ができています。さらに教材だけでなく、一般書籍・雑誌・情報誌などの編集や本づく
りの仕事にも積極的に取り組んでいます。だからだんだん手広くなっていくんです。包丁1本で和食もフランス料理も作ってしま
う。私自身がそういう生き方で編集の業界を流れてきたので、1分野だけに固まるのは性に合わないんです。ファミリーレストラ
ン方式と私は呼んでいますが、地方の編集プロダクションという条件が、そのような方式を余儀なくしている面が大きいと思いま
す。地方では専門性が成り立ちにくいですからね。

●地方ゆえの特色ということでしょうか。
小林 その通りだと思います。この方式は出版社のほうでもメリットがあります。たとえば5教科セットの仕事がある場合、私ど
も1社ですべてまかなえる点です。専門性を強調されるところにバラバラに依頼するよりも、全体の統一感を保てるし、エディッ
トにイラストも表紙も本文のレイアウトも含めて全部任せられるわけですから、発注するほうも楽ですよね。長い伝統と経験を重
んじる大手出版社になりますと、ちょっと地方のプロダクションでは心配だと思われるかも知れませんが、比較的短期間に勝負を
かけたい出版社には、わりと重宝されています。営業を中心とした編集部のない出版社もありますから、そういう会社には非常に
便利でしょうね。でも、最近は大手のメジャーな出版社からの仕事が増えてきました。質の高さも東京並みになったのでしょうか。
●DTPを使っての編集作業も御社の特徴になりますね。
小林 DTPでメインに編集しているのは小ロット多品種・同一パターンの作業に適している特性を活かして、高校入試問題集と
か情報誌・マニュアルなどです。DTPの良さは基本的に編集者が使うところにあると考えていますので、全員使えるようにしよ
う、というのが私の考えなんです。だから編集経験者がタッチすることになっています。実作業の流れとしては、現在やや分業化
せざるを得ない状況です。しかし編集部とDTP部門は隣り合った部屋で作業していますから、きわめて緊密に、担当者同士で直
ちに連絡・対応ができるようになっています。たとえば入試問題集などは1年しか寿命がない。こういうものは必然的に低コスト
が要求される。こんなときに入稿から校了まで1日でやってしまうようなシステムは貴重です。「早く安く質がよい」とい
うのが編集プロダクションの生き残る道だといった人がありますが、まさにその通りだと思いますね。
●総合的に編集技術を覚えたい人には絶好の会社ですね。
小林 編集実務は早く身につきますね。人は苦労した分だけ成長するといいますが、その点ではおしなべて編集プロダクションと
いうところは成長できる場所ですよね。しかし、生き方の問題としては、出版社か編プロかという問いには、難しい部分がありま
すね。編集に携わりたい、ジャーナリズムの世界で生きたいという思いは共通ですが、その具体的な目的意識がどこにあるかが問
題でしょう。1度しかない人生を、人との出会いだとか、時代を掴みたい、時代の先端で呼吸をしたいと願うような形で出版ジャ
ーナリズムを目指すならば、メジャーのほうが人脈だとか情報のネットワークだとかノウハウにおいて有利でしょうね。先端を作
っているわけですから。しかしプロダクションでは、自分の力次第で思うようなことができるというメリットがある。出版ジャー
ナリズムを目指す人は、会社に帰属して業績を伸ばし、会社の発展に尽くす、というタイプよりは、その道のプロになりたいとい
う人が多いですよね。そうすると、自由が利き、自分の力が試される編集プロダクションは自立への近道じゃないでしょうか。た
だし大変な苦労がいる場ですけれどね、条件面でも。そのぶん船の漕ぎ方を教わることができます。たいていの場合、社長はなん
でもこなす船長ですから、トータルに自立して行く道を学ぶことができるのです。
●編集プロダクションに入りたい人に望む言葉を……。
小林 自分もプロダクションを起こすくらいの気概で入ってもらいたいですね、苦労は多いけれど。私なんかは、学生のころは大
手の出版社に入って、ジャーナリストの肩書をもって世界を飛び回りたいと思っていたんですが、能力もチャンスもなく、勉強も
しなかったので、小さい出版社からスタートしました。途中から方向転換してこの仕事を始めたんです。プロダクションはある意
味でなんでもできる会社だと思うんですよ。チャンスさえあれば自分で本を出すことだってできる。プロダクションの中で一流に
なればチャンスは飛躍的に広がりますし、私は敗者復活戦だと思っています。この言葉、嫌いな人もいるでしょうが、むかしNH
Kドラマでやっていた「秀吉」型の生き方ではないでしょうか。常に前向きで、なによりも大きな夢を持った人物。プロダクショ
ンの求める人材はまさにそういう人だろうと思います。
●小林さんは専門学校で教えていらっしゃったのでしたね。
小林 はい、編集講師稼業は,17年間やりました。編集の技術はトータルなもの、全人的なものだと思うのです。だから教えると
いっても言葉や文字で伝達できるのはほんの一部分です。全体的にその人が持っている生き方を学んで欲しいと考えています。

