日本編集制作協会(AJEC)/9月オンライン編集講座「生成AIと編集制作(基礎編)」を聴講して」
日本編集制作協会(AJEC)/ 9月オンライン編集講座
テーマ:「生成AIと編集制作(基礎編)」
日時: 2025年9月25日(木)18:00~19:30
講師:ベネッセコーポレーション ものづくり推進本部 藤本隆 氏
株式会社ベネッセコーポレーションの藤本隆氏の穏やかな語り口で、AIを「敵」ではなく「相棒」にするためのヒントを教えていただきました。
私などは誤解しておりましたが、生成AIは特定の「知識」をデータベースとして持っているわけではありません。では、なぜ質問に対して的確に答えられるのでしょうか。
AIの回答の元となるのは、膨大なテキストデータから学習した「トークン」(言葉の最小単位)です。AIは、これらのトークンの関係性を統計的に分析し、次に続く言葉を予測して文章を生成しています。源頼朝について質問すると、彼に関する言葉のトークン群が選ばれ、繋ぎ合わされて、まるでAIが歴史上の頼朝のことを知っているかのような文章が生まれます。
この現象は「創発(Emergence)」と呼ばれています。AIはもともと自然な会話ができるように開発されましたが、学習データが臨界点を超えた途端、意図せずして人間が「知識」と呼ぶような正確な情報を生み出し始めました。
この仕組みを理解することは、AIを扱う上で非常に重要です。AIが知識を体系的に持っているわけではないため、生成される情報が常に正確であるとは限らないからです。
今回の聴講レポートでは、藤本氏から教わった
- AIの得手不得手
- AIっぽい文章から脱却するためには?
についてまとめてみました。
AIの得意なこと・不得意なこと
AIが得意なこと(分析・解析)
AIは、文章をトークンに分解し、その関係性を把握するという根本的な動作から、文章の「分析」や「解析」を得意としています。
- 要約・抽出: 長文を簡潔にまとめたり、特定のキーワードや固有名詞、感情表現などを抽出し、分類したりする作業はAIの得意分野です。
- 文法チェック・校正: 文章の論理構造や誤りをチェックさせることも可能です。
AIが不得意なこと(創造性・個別具体性)
一方、AIは人間のクリエイティビティや個別具体的な文脈を理解するのが苦手です。
- 独創的なアイデア出し: AIが提案するアイデアは、学習データに基づいた「ベスト10」になりがちで、独自性に欠ける可能性があります。
- 個別具体的な状況への対応: 細かい条件や背景を伝えずに質問すると、一般論的な回答しか返ってきません。
AIっぽい文章から脱却するには?
AIが生成した文章には、どこか人間味がなく、平坦な印象を与える「AIらしさ」が感じられることがあります。この「AIらしさ」を消すには、プロンプト(AIへの指示文)を工夫することが鍵となります。
単に「〇〇を書いてください」と質問するのではなく、AIにペルソナを設定して質問すると、こちらが求める答えが返ってくる可能性が高まります。「あなたは子供向けの物語の専門家です」といった役割を与えることで、AIはその人物になりきって文章を生成するため、表現に人間らしい揺らぎや個性が生まれます。
また、文章のトーンや目的を具体的に伝えることで、AIの得意な「分析・解析」を最大限に引き出しながら、独自の文章を生み出せます。
まとめ
AIは文章生成の素晴らしいツールですが、そのままで「完成品」になるわけではありません。AIが作った文章をそのまま利用することは、著作権や人権、正確性のリスクを伴います。
- 著作権: AIが生成した文章の著作権の帰属については、まだ法的な整備が不十分です。
- ハルシネーション: AIは時に、事実に基づかない「嘘」の情報を生成することがあります。
だからこそ、AIが出力した文章を最終的に磨き上げ、責任を持つのは編集者です。AIには「企画の壁打ち」や「一次情報の整理」といった作業を任せ、編集者はよりクリエイティブな仕事に集中できます。
AIを使いこなし、その出力に「人間らしさ」と「責任」という付加価値を加えられる編集者こそが、いま求められている編集者なのだと再認識した1時間半の講座でした。
なお、今回から、AJEC編集講座のアーカイブ配信が期間限定で行われます。
下記の概要を合わせてご確認いただき、ぜひとも充実した内容の編集講座をご覧いただけますと幸いです。
● AJEC編集講座【アーカイブ配信】のご案内
テーマ:「生成AIと編集制作-基礎編-」
講師:藤本 隆(ふじもと・たかし)氏
- イベントページ
https://archive-ajec-koza250925.peatix.com/view - アーカイブ配信時間:90分
- 視聴期間:2025年10月8日(水)00時00分~2025年10月22日(水)23時59分(14日間)までの期間限定による公開です。
※期間を過ぎますとご視聴いただけませんので、ご注意ください。 - 視聴料:2,000円
- 主 催:日本編集制作協会(AJEC)/教育委員会
- お申込み:こちらのPeatixからお願いします。
→https://archive-ajec-koza250925.peatix.com/view - 問合せ先:AJEC事務局/E-mail:info@ajec.or.jp
2025年10月14日 株式会社エディット(文責:伊藤隆)