日本編集制作協会(AJEC)/10月オンライン編集講座「レイアウト・デザインと編集」を聴講して

講師の並木瑛子氏は、レイアウト・デザインは、単に紙面を装飾する作業ではなく、編集者の中にあるアイデアやメッセージを、読者に伝わりやすい形に具現化する計画や構想であると言われていました。

デザインと聞くとセンスが問われる領域だと感じて、少し及び腰になっていたのですが、本講座を通じて、編集者としてレイアウト・デザインをどう捉え、どう活用すべきかを整理することができました。

日本編集制作協会(AJEC)/ 10月オンライン編集講座 
テーマ:「レイアウト・デザインと編集」
日時: 2025年10月23日(木)18:00~19:30
講師:ベネッセコーポレーション ものづくり推進本部  並木 瑛子氏

センスよりも「手法の理解」が大切

デザインというと、どうしても「センス」という言葉がつきまといます。しかし、並木氏は「センスは自信があってもなくても大丈夫」とのこと。編集者に本当に必要なのは、センスよりも、企画をレイアウトやデザインに落とし込むための手法を理解できることだと言われていました。

私たち編集者が扱うエディトリアルデザインは、個人のメッセージを具現化する「アート」とは異なり、企画されたメッセージを読者に伝えるための手段です。この認識を持つことで、デザイナーの方とのコミュニケーションも円滑になります。

デザイナーの方とのやり取りで大切なのは、「この部分をもっと赤くしてほしい」といった具体的な指示ではなく、なぜそうしたいのかという「企画の意図とメッセージ」を言葉で的確に伝えることです。企画のベースを共有することで、もし上がってきた紙面が意図と違っても、こちらの意図を冷静に伝えれば、より良い紙面を一緒に作り上げることができるにちがいありません。

編集者が押さえるべき四つの基礎知識

本講座では、編集者がデザイナーの方と円滑なやりとりをするために必要な四つの基礎知識(紙面の構成要素とその役割、構図の知識、色彩の知識、文字組みの知識)を学びました。ここでは、そのうちの三つを取り上げます。

1. 紙面の構成要素とその役割

紙面の各要素(タイトル、リード文、図版など)について、それぞれが持つ役割を明確に定義することが重要です。たとえば、リード文は読者の興味を次に向けないための役割を担うのか、それとも内容を要約することで詳しく読んでもらうためのきっかけの役割を担うのか、といった設計です。企画で伝えるメッセージが明快であること、視線を集めたい場所を絞り込むこと、全体の流れがスムーズであることを常に意識する必要があります。

2. 構図の知識

構図の知識は、意図した印象を読者に与えるのに役立ちます。特に編集者にとって心強いと感じたのは、「整列の構図(グリッドデザイン)」です。この手法は情報が整理されていることを伝えられ、規則的かつ合理的な印象を与えます。デザインセンスに自信がない場合でも、矩形を組み合わせたグリッドデザインを用いることで、紙面全体のバランスを崩さずに要素を移動させられるので、編集者として扱いやすくて魅力的な手法の一つと言えます。

また、視線誘導の知識も実践的なものです。横組み(左開き)の場合、読者の視線は左上から右下に流れるため、この流れを意識して、注目してほしい要素やまとめの要素を適切に配置することで効果的な見せ方が演出できます。

3. 文字組みの知識

書体選び: 公式文書や縦組みに強い明朝体と、Web上で主流となり現代的な印象を持つゴシック体の、それぞれの役割を見極めて効果的に用いること。紙面全体では多数の書体を使用せず、同書体で太さの違い(ウェイト)から変化をつけることで見やすくなります。

組版の工夫:組版上の微細な調整(句読点の処理や文字間隔の処理など)が、紙面の印象を大きく変えます。例として、問題集の選択肢の記号と語句の間隔を、他の行の記号と語句においても揃えるなど、読者が内容に100%集中できるように読みやすくするための工夫を紹介されていました。この例からも、並木氏の言われる「神は細部に宿る」という言葉が、編集者の目指すべき姿勢であると感じました。

読者への「配慮」を追求する

レイアウト・デザインは、単に見た目の問題だけでなく、読者の使いやすさ(ユーザビリティ)にも直結します。例えば、分厚い本でノドに近い部分に解答欄を設けると、読者が書き込みにくいという問題が生じます。このような書き込みにくさを解消するために、企画者である編集者がデザイナーの方と相談し、紙面のレイアウトを調整する必要があります。

また、余白の取り方も読者に与える印象を大きく左右します。余白を少なくして版面を広く取ると「情報豊富、賑やか」(例:スーパーのチラシ)、余白を大きく取って版面を小さくすると「すっきり、上品」(例:美術館の案内)といった演出効果があるという学びも、紙面の印象を決定するための知識として役立つのではないでしょうか。

終わりに

今回の講座で、デザインは感性ではなく論理と知識に基づいていることを理解しました。デザイナーの方と精度の高い対話を重ねるためには、専門用語や知識を正しく理解し、何よりも「相手へのリスペクト」を忘れないことが大切だと並木氏がおっしゃっていたのが印象的でした。

また、並木氏が紹介されていた『DTP印刷デザインの基本(玄光社)』や、生成AIツールも活用しながら、知識に裏付けされた無理のない業務設計を目指して、レイアウト・デザインの学びを深めていきたいと思います。

2025年11月24日 株式会社エディット(文責:伊藤隆)