編集と印刷・のんびりコラム 「第3回 カラー印刷のお話(3)」

こんにちは。エディット企画ソリューション部の藤本です。

このコラムではちょっと一息、少し古い時代に戻ってレガシーな編集や印刷技術をのんびり振り返っています。今回は沼に入りかけた「カラー印刷」のお話の続きです。

 カラー印刷のお話(3)

こんにちは。エディット企画ソリューション部の藤本です。

このコラムではちょっと一息、少し古い時代に戻ってレガシーな編集や印刷技術をのんびり振り返っています。今回は沼に入りかけた「カラー印刷」のお話の続きです。

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カラーの印刷物はCMYKで再現されるプロセスカラー印刷が主流です。わずか4色インキでよくぞ写真などのカラーを表現できるものだと感心しますが、4色で表現できる色域は目に見える色域よりも狭く、極めて鮮やかな色や淡く微妙な色の再現は難しかったり無理だったりします。とはいえ色を命とするカテゴリーの印刷物──ポスターやカレンダー、写真集、画集、デザイン誌などでは、この限界を克服しようとさまざまな試みがされています。

よくあるのは、特色を加えた5色、6色印刷です。特色というのはCMYKのプロセスカラーインキ以外に用意する特別色のインキです。飲み終えた飲料の紙パックを開いてみると、印刷に使用したインキ色をタイル状に並べた「色玉」と呼ばれる色見本が見えない所に印刷されてたりします。これを見るとオレンジジュースなんかはCMYKに鮮やかなオレンジ色が足された5色印刷の場合があります。マンガ同人誌の凝ったヤツでは、ポッと染まった頬の色、うっすら綺麗な桜色の肌に命をかけて、CMYKに蛍光ピンクを加えた5色印刷にしている場合も。

書店に並ぶオシャレ雑誌の表紙は大抵5色以上です。雑誌名の題字が蛍光色だったり金銀だったり。目につかなければ売れない。インパクト勝負! クッキリはっきり目立つ表紙! と多色印刷で激しい戦いを演じているわけですが、さすがに本文は4色ですね、コストがかかりますから。

以上は、プロセス4色では出せない特定色をピンポイントでフォローする技術というか知恵なのですが、もっと本気で色域を広げようと試みた印刷技術もあります。

1つは印刷機のメーカーとしても有名なハイデルベルク社が提唱する「スーパーファインカラー」です。「ハイファイ印刷」なんて呼び方も聞きますが、たぶん同じものを指しているのではないかと思います。これは豪華です。CMYKにRGBのインキを加え、7色印刷機で刷ります。R(赤)はM+Yで表現できますが、どうしても濁りが入って彩度が低くなってしまう。そこで彩度の高い原色の赤を加えてしまえ! という論理でCMY各色の補色RGBを加えます。

もう1つはアメリカのインキメーカー、パントン社が提唱する「ヘキサクローム」です。こちらはCMYKに、彩度が失われがちなOGつまりOrangeとGreenを加えた6色印刷です。同じ原理で、日本のインキメーカー、DIC(旧称は大日本インキ化学でしたね)も「ダイキュア・シックスカラーシステム」を提唱していました。これもCMYKOGの6色印刷です。

見本を見る限り、どちらも鮮やかさ美しさで従来のプロセスカラー印刷を大きくしのぎます。むちゃくちゃ綺麗です。すべての出版物がこれらで印刷されていたらボクらの色に関する認識も変わりそうなものですが、実際は効果とコストのバランスから、なかなか普及していないのが現実です。

まずは6色、7色を一度に刷れる印刷機を導入している印刷会社がそれほど多くないこと。標準的なカラー印刷機、つまり4色印刷機で「スーパーファインカラー」印刷や「ヘキサクローム」印刷をしようと思ったら、印刷機に2度通ししなければなりません。インキを乾かす時間や、刷版変更、インキ変更など機械の再セッティングなどを考えると、結局2倍ほどの印刷費が必要になってしまうのです。

また人間の目は、色域の狭い現状のプロセスカラー印刷でも、だいたいの色が出ていればフルカラーに見えてしまういい加減さ、というか大らかさがありますから、比べない限りはさしたる不満がなかったりもします。

それにしても、色域の広いデジカメ等のRGB画像を6色、7色に分解することは「プロファイル」という変換用データがあればソフト上で一発ですから、印刷用のデータはいつでも準備OKな状況です。ですから今後、印刷技術がさらに進みコストが下がれば6色、7色印刷も普及していく・・・はずではありました。実際には急速なデジタル媒体への移行と、出版不況、それに伴う印刷業自体の縮小により、この動きは夢に終わりそうな感じです。

未来の印刷物は、今の印刷物がかすんで見えるような鮮やかなものにどんどんなっていく・・・そんな世界を見てみたかったようにも思います。

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やや寂しい話になってしまいましたが、今回はここまで。編集、印刷業界の方には「何をいまさら」な話題ですが、引き続きティーブレイクとしてお付き合いください♪