第12期第8回AJEC「編集教室」に参加して
【講義内容】◎営業と編集が連係していくために必要なこと
~今後ますます重要度が増す、作り手としての営業~
講師:井上 直(いのうえ ただし)氏
株式会社ダイヤモンド社 取締役 営業局長兼大阪支社長
【講師略歴】1971年生まれ。青山学院大学卒業後、証券会社、ソフトウェア流通会社を経て、1998年7月にダイヤモンド社に入社。現在、取締役営業局長兼大坂支社長兼部長。
今回の講演は、二つのパートに分かれていて、Part1は、「営業と編集が連携していくために必要なこと」で、Part2は、「出版界の現状とこれから」という構成になっていた。
各Partの概要を以下に記す。【Part1】 営業と編集が連係していくために必要なこと
- ① 1998年入社当時に抱いた印象
- ② 正しい仕事をするために
- ③ 発行点数主義からの脱却~【営業】
- ④ 発行点数主義からの脱却~【編集】
- ⑤ 商品を理解してから営業促進を
- ⑥ 一冊一冊を長く売るために~その1
- ⑦ 一冊一冊を長く売るために~その2
- ⑧ 書店員に信頼されるために~その1
- ⑨ 書店員に信頼されるために~その2
- ⑩ 編集者との円滑なコミュニケーションが生まれるために
- ⑪ 著者からの信頼を獲得するために
- ⑫ 一冊一冊を長く売るための組織作り
- ⑬ まとめ
【Part2】出版業界の現状とこれから
- ① 出版市場の現状~販売金額の推移~
- ② 出版市場の現状~返品率の推移~
- ③ 出版市場の現状~書店数の推移~
- ④ 出版市場の現状~新刊点数の推移~
- ⑤ 出版市場の現状~取次会社~
- ⑥ 苦境の原因
- ⑦ これから起きること
<感想>
井上さんは、ちょうど1998年に入社ということで、当時はダイヤモンド社では雑誌が主流だったという。その後、「もしドラ」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』)というベストセラーを出たが、雑誌も売れており、営業は編集が作ったものを流通に流していればそれでよいというような状況だったそうだ。
つまり、ダイヤモンド社といえば雑誌の会社で、書籍はついでに売るという状況だったが、しっかりやれば絶対に書籍も売れる会社になると信じて、営業と編集の連携を模索したそうだ。それから20年ほどすぎ、今では絶妙なコミュニケーションが取れるようになっているという。
現在では、情報を共有して「正しいこと」とは何かを徹底的に追求することを基本に、①「読者」に目線を置く、②「皆で作って皆で売るという意識を持つ、③お互いの視点の違いを理解する、④危機を変わる最大のチャンスととらえる、などができるようになっているとのこと。
この辺の編集と偉業の連携については、少し古いが、東洋経済オンラインの『ダイヤモンド社の本は、なぜ売れるのか?特別対談 ベストセラーを生むための編集と営業(上)』が参考になる。http://toyokeizai.net/articles/-/38681
ところで、Part2の「出版業界の現状とこれから」は、データが中心だが、このデータは、ダイヤモンド社の営業と編集で共有しているデータのようだ。そういう意味では、編集も営業も、出版界の現状をしっかり把握しているようだ。
このデータでは、最も本の売り上げが多かった1996年度を基準にして、ほぼ5年ごとのデータを並べられていて、眺めているだけで、いろいろなことが見えてくる。
- ① 全体の売り上げが、半分になっていること
- ② その割には、新刊点数は、減っていなくて増えていること
- ③ 定期的な物流を担っていた雑誌の売り上げが、書籍より下になってしまったこと(1996年には、書籍の1.5倍の売り上げがあり、書籍は、雑誌の流通網に抱き合わせて配本などされていた)
- ④ 書店数も半減してしまったこと
- ⑤ 取次も13社から、5社になってしまったこと、などなど。
ここから、井上さんは、これから起きることとして、出版社の大改革の時代になると結論づけている。
出版界の苦境の原因は、①雑誌、コミック売り上げの落ち込み、②物流危機、③供給過多、④混乱する書店現場、などがあげられている。
最近のニュースでは、コミックの売り上げ比率が、紙の本の売り上げを電子書籍の売り上げが上回ったようだ。
今回の講演を聴きながら、一般書をやっている編集プロダクションとしても、危機感を共有する必要があると思った。直接的には、すぐにも、①企画の多様化、②制作コストの削減が行われるに違いないということだ。これらは、現在もうすでに始まっているが、さらに一層、そうなっていくということだと思われる。その上、版元自体の存立が危なくなってきているということでもある。井上さんは、最後に、「出版界の3月危機!」ということを強調されて、講演を閉じられた。
(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)









