第8回教育ITソリューションEXPOに参加して
5月17~19日に、国際展示場で、第8回教育ITソリューションEXPOが開催された。
私は、18日(木)に参加。まず、10時~11時半の2名による基調講演と15時~16時の「学びNEXT特別講演」を聴講した。そして、講演の合間と終了後、会場を見学した。
講演については、要旨をまとめ、最後に会場見学を含めて参加の感想を書く。
●基調講演1
未来を担う世代にふさわしいICT教育充実をめざして
~多久市のめざす方向性と実践~
講師:多久市役所市長/全国ICT教育首長協議会会長 横尾俊彦
1 何のためのICT教育の充実か
「だから学生は嫌われる20の理由」という記事がWebにある。
http://www.koka.ac.jp/morigiwa/tools/dakaragakusei.htm
なかなか面白いので、読んでみるとよい。その中に、「ちょっと難しい仕事だと、『直ぐにできません』という」いうのがあるが、英語の「impossible」は、こうも書ける。「I'm possible!」
当然のことながら、ICT教育の充実は、子供たちのためにある。子供たちの人生行路は多様で、何が起こるがわからない。
「1.01の法則と0.99の法則」というのがある。これは、それぞれを385乗するとどうなるか。後者は、限りなくゼロに近づく。本のちょっとした違いが、後に大きな差になる。それが、ICT教育。
ここで、蘇東坡のチャレンジ精神、上杉鷹山の有名な言葉を紹介され、教育視察で、韓国や、イギリスの21世紀型スキルを育てる素晴らしい授業を観て、ICT教育の必要性を考えるようになったという。
2 多久市の取組について
多久市は、佐賀県にあり、佐賀県は、全国で一番のICT先進県である。
多久市は、多久4代藩主多久茂文が若い頃より学問を好み、領内の平和と繁栄には、儒学を興し、人を育てることが肝要であると考え、武士、町民、農民の身分を問わず、志あるものが学べる学問所、後の「東原庠舎」を1699年に開校し、1708年に儒学の祖・孔子を祀る「多久聖廟」建立したことで有名。(多久市HP参照)
https://www.city.taku.lg.jp/
また、孔子の教えを受け継ぐために、論語カルタも作って、子供たちに親しんでもらっている。
http://ko-sinosato.com/publication/index.html
多久市は、今2020年を目標に、人材育成を目指している。2020年ごろにはICT人材が40万弱の不足になるという。その変革の波に乗らなければいけない。
ICT=「I create Tomorrow」だ。
ICT教育というのは、論語にある「恕」の精神を具現化したものだと捉えているという。
論語「衛霊公第十五」の言葉の紹介。
<子貢問曰、有一言而可以終身行之者乎。子曰、其恕乎。己所不欲、勿施於人。>
子貢問うて曰はく、「一言(いちげん)にして以て終身之を行ふべき者あるか」。
子曰はく、「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿れ」。
(子貢が問うて言うには「ただ一言で終身行うことのできるものがありますか。」孔子がいうには「それは恕という一言であろう。恕は己の心を推して人を思いやるのである。己の心に欲しないことは人も欲しないから、これを人に施し及ぼさないようにせよ。」)
(宇野哲人著『論語新釈』講談社学術文庫/1980.1.10p481より)
横尾市長はこれこそが学問の基本だと思っているという。
最近の多久市のICT教育の実践例として、子供たちの共同作業に、OneNoteを利用した授業を紹介。これを使うことにより、Full Cloudの環境のなかで、学習ができたという。そして、彼らは、Skypeで市長にプレゼンテーションをしていた。(私も挑戦してみたが、OneNoteはEvernoteとよく似ている。ただ、一つのページに、いろいろなものを張り込む形式なのが、少しなれるまで大変だ。子供たちのほうが早く慣れそうだ。)
3 全国ICT教育首長協議会について
全国のICT教育の首長がつくば市でシンポをしていたときに思いついて、参加者みんなで、この組織を作った。全国の107の市町村が参加。
(多分、横尾市長が主導し、会長になったとおもわれるが、こういうことができるところがすごい人だと思った。)
只今、提言2017を作成中。https://ictmayors.jp/
●基調講演2
教育情報化の動向と今後の展望
講師:文部科学省 生涯学習政策局情報教育課長 梅村 研
1 教育情報化の目指すもの
教育の質の向上のために教育情報化を進めるということが大事で、その内容としては次の三つがある。
- 情報科学教育(プログラミングなどのリテラシー)
- 教科にICT利用
- 校務にICTを利用
2 最近のトピック
① 学習指導要領の改訂で取り上げられたこと
- 情報活用能力の重要性(言語能力と同じ位置付け)
- プログラミング教育を導入
- ICTをアクティブ・ラーニングに利用する
② ICT教育懇談会の取組
詳しくは、文科省のHPより
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/shiryo/attach/1376326.htm
3 各論
① 行政の取組の現状
- 3.6人に1台を目指している
- タブレットPCやネット接続の拡大
- 教員用は100% 統合システムは4割普及している
→市・区・町・村別のデータがある
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/__icsFiles/afieldfile/2015/11/06/1361388_01_1.pdf - ICT有識者会議 が開催されている。
→ICT支援アドバイザーの支援 - 防災施設の支援(ICT環境の活用)
- 未来の学びコンソーシアム(総務省、文科省、経産省が提携)
https://miraino-manibi.jp/
小学校のプログラミング教育をついて取り上げている
② ICT活用の効果があったという情報
- アクティブ・ラーニングでの利用
- 研修、養成、→実践事例集
4 お願いしたいこと
- ① ICT教育の設備の整備をすすめること
- ② 情報活用能力の育成、プログラミング教育の振興。ICTの利用など
- ③ 現場の情報処理の更なる推進
その場合、セキュリティポリシーの作成をしてほしい。
●学びNEXT特別講演
教育改革を踏まえた教育情報化の重要性
~プログラミング教育の動向~
講師:文部科学省生涯学習政策局情報教育課情報教育振興室長 安彦広斉
1 教育改革の背景
- いまある職業のうちかなりのものが消える(アメリカで提示され騒がれている)
- 人口増加(日本は減っているが)
- 第4次産業革命 IOT
- データ量が2年ごとに倍増している(技術の進化、AI)
- AI農業(食の自給率39%)の開始
2 日本の教育で気がかりなこと(ちぐはぐな状況)
- 子供たちは勉強しない(特に中間層)
- 高校生の自己認識が悪い
- 教師の自己能力観は、下の方(優秀だが子供に教えられない)
ティーチングはできるが、メンターにはなれない - PISAでは常に大人も子供のトップクラス
- ノーベル賞も多い(しかし、最近の研究ではどうか)
3 教育改革の動き
4 学習指導要領の改訂(今年の3月に小中が告示、高校は来年の予定)
- 教育課程の基準で教科書が準拠しているもの
- 情報化・グローバル化の中で成果を上げられる人材に育成を目指す
- 育成すべき資質・能力の3つの柱
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm
5 教育の情報化の目指すもの
- 情報活用能力の育成→教科横断的に
- ICTを利用した授業
- 校務の情報化
- プログラミング教育は2022年から
単なるユーザーで終わらないこと
未来の学びコンソーシアム 官民一体か完全無料 スクラッチを利用
6 情報モラルの指導
- メディアリテラシーとの関係を考えること
- 情報の海をどう泳いでいくかというときに注意すべきこと
7 ICTの環境整備の状況格差あり
- 財政難や税収の減少などにより、地域によって格差ができている。
■展示ブースでの様子
【東京書籍のブース】
算数問題集の説明を受ける。どこで間違えてかによって、さらに追加の問題で勉強できるところがうまくできていた。
【CONETSのブース】
全ての参加教科書会社が常駐しているわけではなく、輪番でやっていた。
お茶の水附属中学校の宗我部義則先生の「生徒が生き生きと確かに学ぶ国語科の授業づくり」で人物相関図の活用の実践例の紹介をしていた。
- 「先生が見せる」から「学習者が自分で操作する」ことへの転換
- 授業でタブレットを活用して授業生徒の交流がうまくできていた。
【NHKエデュケーショナルブース】
福岡大学理学部寺田貢先生の「大科学実験の映像を活用した科学リテラシー教育の授業実践」
- 学校ではできない実験を学生に見せられる
- 学生が沢山くるようになった(楽しい授業)
※現在は、見逃し番組の視聴など、かなり利用できるものが増えている。
■聴講と展示ブースを回って
全体の流れとしては、昨年とそんなに大きな変化はない。勿論、これまで以上に環境が整備されつつあるが、多分、デジタル教科書が普及(2020年?)するまで大きくは変わらないと思われる。
東京国際ブックフェアでもそうだったが、今回、講談社や小学館は参加していない。CoNETSなども含め、教科書、教材業界の参加もあるが、牽引しているのはIT企業が中心だ。大日本も参加していないし、凸版印刷は東京書籍と共同のブースで東京書籍が主体だ。なんとなく、ちぐはぐな感じがする展示会だった。
ただ、参加企業が増加していることだけは確かだ。会場外まで使っている。もともと、こうしたフェアは、ブックフェアから始まり、それに付加される形で、開催されてきたものだ。現在、参加企業は、かなり増加しているが、どれだけ成果があるかは不明。ただ、開催者としては、利益が出ているだろうと推測される。
逆に、ブックフェアは、利益が出ないということで、中止になってしまったが、本当は、みんなで損を補填しながら、活用すべきものだったはずだ。エディットでも、金はかかったが、後の利益のために、ブックフェアに参加してきた。出版界がこうしたイベントに利益が出るか出ないかで参加かするかどうかを決めるようになってきたこと事態のなかに、出版企業の体力の低下がはっきり現れている。
「スクラッチ」(プログラミング言語)などを使ったプログラミング教育の話題は出るが、実際どう教えるのかは、まだまだ未知数だと思う。多分、今後、塾なども含めて、「ブログラミング力」育てることと、「プログラミングの勉強を通して論理的思考力」を身に付けることが、分化していくかもしれない。どちらも大切だが、結果としては、英語と同じで、使えるようにならなければ意味がないわけだ。しかし、それは、小学校などで可能かどうかは未知数だと思われる。
教育用のコンテンツとしては、各社ともタブレットをつかったドリルに取り組んでいた。これは、現在のデジタル教科書についているものでもある。こうしたものは、かなり実用のレベルに達しているが、将来的には、正式の「デジタル教科書」とどう結びつくのかがまだ、よく分からない。これは、多分、「デジタル教科書」のあり方や使われ方が、現在普及している指導用のデジタル教科書の延長線上にはないからだと思われる。ここは、これから注目していくべきところだと思われるが、今回の展示では、まだはっきりしていなかった。
今回は、横尾市長の講演が素晴らしかった。特に新しいことを語られたわけではないが、多久市の教育の特色と横尾市長の考え方がよく分かり、プレゼンもよかった。しかし、文部科学省の二人の講演は、パワーポイントの資料の説明のようなところもあり、もう少し工夫して欲しかった。しかも、今回は、パワーポイントの資料も手に入らなかったので、残念だった。
※直接教育に触れているわけではないが、今後子供たちのICTの環境がどうなるかという意味で、先日のAJEC編集教室で紹介されていた、角川歴彦著『躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア──メディア大再編』(毎日新聞社/2017.6.5)は、参考になる。
(文責:東京オフィス 塚本鈴夫)









