エディット通信(2020年小満号)

■毎日新聞校閲グループ『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』(毎日新聞出版刊)を読んで

2020.5.28

6章仕立て・224ページの『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』は,毎日新聞校閲グループ運営のインターネットサイト「毎日ことば」とツイッター「毎日新聞 校閲センター」などで発信された文章をもとにまとめられたものです。

新聞校閲のなかで参考になる,ものの見方を,自分なりに抽出して深く読み込んでいくと,とかく曖昧になりがちな「校閲」の定義を明確にすることができます。

第1章では,「間違い紙面」で,校閲力チェックとして,アメリカの共和党・トランプ氏が大統領選で当選が決まったときの,記事のもととなる,いくつかの誤りを含んだ紙面で「校閲力チェック」の体験ができるページが設けられています。

「間違い紙面」のあとに,誤りの箇所と解説がまとめられています。15か所のミスについて,それぞれどのような観点で校閲がなされるものか,具体的にまとめられています。

いくつか紹介させていただきます。

  • ×「ワシンントン」→〇「ワシントン」
    ※新聞記事の【 】で囲まれた文字は,このような入力ミスを見逃しがち。赤ペンで線を引きながら一文字ずつチェックしている。
  • ×「軍暦」→〇「軍歴」
    ※似た字なので,うっかり見過ごしがち。誤変換に気をつける。
  • ×「1946年6月14日ニューヨーク出身」→〇「1946年6月14日ニューヨーク生まれ」
    ※出身がいけないわけではいが,「出身」は必ずしも生まれた所を指すとは限らない。 ※「出身」を,≪長く過ごしたところ≫を言う人もいる。 ※ニューヨークが生まれた場所とわかれば,「ニューヨーク生まれ」が正しい。
  • ×「8日」→〇「9日」
    ※写真説明が本文の説明と一致していないことを確認する。
  • ×「民主奪還」→〇「共和奪還」
    ※見出しの文字がOKだからといって,本文が間違いないとは言い切れない。

校閲は,虫眼鏡に似ていると思いました。

虫眼鏡によって,大きく見たい文字に焦点を当てて大きく見られるようにし,正確な文字を認識します。

校閲には,文字列,文,文章,段落などのなかに,どんな誤りがありそうかという「焦点」がなければ,ただ何となく読み進めて終わります。

第1章のトランプ氏の大統領当選確実当時の記事におけるミスについて,「すべて(と思われる)のミスを見つけ出さなければ,校閲記者のミッションは果たせたことにならない」と言われるところに,この仕事の責任の重さと生半可な知識では成り立たせることのできない総合力を思い知るのでした。

校閲グループの沢村斉美さん(歌人)の,校閲にまつわる短歌を紹介させていただきます。

大ゲラを睨みゐし身を起こすときかなしデスクの瞬(しばたた)くまなこ
なにくはぬ顔せる文字をいぢめぬき廃せり赤きこのペンのさき

『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』の詳しくは……
https://www.amazon.co.jp/dp/4620324639/

毎日ことば http://www.mainichi-kotoba.jp/

(文責:名古屋本社・企画ソリューション部 伊藤隆)