エディット通信(2020年皐月号)

■鷲尾賢也氏『編集とはどのような仕事なのか 企画発想から人間交際まで』(トランスビュー刊)を読んで

2020.5.12

今回は,鷲尾賢也氏『編集とはどのような仕事なのか 企画発想から人間交際まで』を紹介いたします。

残念ながら,鷲尾氏は6年前に69歳でお亡くなりになられました。私は,鷲尾氏の編集講座を何度か聴講したことがあり,いまも時々鷲尾さんの話を思い出しております

上品な身のこなしで壇上に上がられ,会場の全員を見渡して,ときに冷静に,ときに情熱的に語られている姿が印象的でした。

鷲尾氏は,1969年に講談社に入社され,「週刊現代」「講談社現代新書」,PR誌「本」,「選書メチエ」に関わられ,多くの書籍において,編集長を歴任されました。

また,『現代思想の冒険者たち』(全31巻)『日本の歴史』(全26巻)など,記念碑的な企画を具体化されます。

今回紹介します『編集とはどのような仕事なのか』は,12章仕立ての,編集者に向けた「鷲尾賢也の語る編集論」といえます。

第一章「編集者とは何か」を読むだけで,本書の概観をつかむことができます。
いくつか,大切な内容と思われる箇所を引用させてください。

  • いい悪いは別として……よいものを作ればかならず読者に届くはずだ,という信念はいまもたしかに生きているだろうが,正直いって現実はそれほど甘くない。
  • 企画案作成のとき,にわか仕込みかもしれないが,自分の教養が試されるのである。
  • どのような版面にするか,図版・写真の入れ方,目次の作り方,小見出し,そして装丁,それらすべてにおいて,編集者のセンス・識見が問われることになる。
  • 編集者は一方で,雑用の管理者という側面を持っている。
  • 私たちの仕事の源は人間なのである。
  • 仕事をおもしろがりながら,どこか世の中のためになりたいといった志が,根底にあってほしい。
  • 夢を描き続けられることも必要な資質である。「持続する志」…編集者に必要な資質だと思える。

鷲尾氏は,原稿を初めて依頼する場合には,「手紙を出すことにしていた」とのことです。そして,「手紙は万年筆で書きたいものだ」とも言われています。

鷲尾氏から,「手書きには,上手ではなくとも一所懸命書いたという雰囲気が出る」と教わり,私も手書きで手紙を添える習慣がつきました。

何度か,鷲尾氏に手紙のやりとりをしたことがありましたが,その際はブルーブラックの万年筆による返信を即座に下さったことをよく覚えています。

本書には,鷲尾氏の編集者時代の「自分史」,出版事情,企画の発想法,原稿依頼とプロット,装丁・タイトル・帯について,販売・流通・宣伝などに至るまで,編集にかかわるあらゆるテーマについて,縦横無尽に語られます。

文章が語るような文体なので,とても読みやすくなっています。生前の鷲尾氏の声が聴こえてくるようで,懐かしく思われます。

不思議なことに,読むと元気が湧いて来る,素晴らしい書籍です。ぜひ,お読みになっていただければ幸いです。

初版は2004年刊行ですが,新版が2014年に刊行されています。

『新版 編集とはどのような仕事なのか 企画発想から人間交際まで』の詳しくは……
https://www.amazon.co.jp/dp/479870152

(文責:名古屋本社・企画ソリューション部 伊藤隆)