エディット通信(2020年弥生号)
■川崎紀弘氏/アレフ・ゼロ著 「実例で学ぶ『伝わる』デザイン」(グラフィック社刊)を読んで
2020.3.19
私は,児童・生徒・学生を対象にした学習参考書やテスト,問題集などを編集制作する者ですが, 各種教材の紙面をどのように設計するのか,常日頃の編集制作と合わせて重要視しています。
- 読者ターゲット
- 紙面の使用(基本書体,文字の大きさ,字詰め行数,色数,判型など)
- 教材のコンセプト
→定期テストの点数を上げるため
→入試対策のため
→日常学習の定着のため など
を想定しながら,どのような紙面が一番わかりやすく学びやすいのかを,デザイナーとやり取りしながら確定させていきます。
「実例で学ぶ『伝わる』デザイン」では,雑誌・広報誌・官公庁パンフレット。フリーペーパーなどの完成形に行きつくまでの,何をどうすれば「伝わる紙面」になるのかについて丁寧にまとめられた,デザインノウハウ解説書です。
本書で言われる「伝わる」というのは,私の捉える「分かりやすさ」「学びやすさ」に近いものとして,読み進めました。
本書で取り上げられる具体例は,私の関わる業界とは異なるものですが,編集者やエディトリアルデザイナーが日ごろ持つ悩みに対して,気づきのある内容が多く盛り込まれています。
本書の構成は,
1章:発想を広げる
- 企業コンセプトを感じさせるストーリーデザイン
- メリハリとダイナミックの使いどころ
- 誌面に個性をもたせるためのあの手この手
など
2章:視点を変える
- それでも言うべきことがいっぱい どう見せる?
- 特集のテンションをどう引き継いでいくのか?
- もうひとひねりをどうやって導くのか?
など
3章:思考を深める
- で,このページって何が見せたいの?
- パンフレットじゃなくて,記事として見せるための方法は?
- 「何のページか」を瞬間で伝えるデザインとは?
などの,3章仕立てです。
「やり直しがきく,デザインの結果がディスプレイ上で確認できる,そんなDTPを使ったデザインの特性が,やっては直しの『様子見デザイン』をはびこらせてしまいました」と言われます。
様子見デザインの対極にある「アスリートデザイン」とは,やり直しがきかない,一回勝負という緊張感の中で作り出された,スポーツプレイのようなデザイン。
事前に(試合前に)編集者と紙面の企画内容を共有し,綿密な準備を行ったうえではじめてなされるもの。
アスリートデザインこそが,エディトリアルデザインの真骨頂なのだと納得しました。
編集者はデザイナーに,アスリートデザインができるように依頼できるかどうかが試されているのだと思います。
本書は,図や写真がふんだんに使われていますが,その行間に書かれている言葉に力があります。
- ビジュアルは大量の情報を,瞬間的に届ける手段
- いちばん最初に目に入る要素を考える
- 伝わることは,やさしくすることではなく,知的欲求のスイッチを入れること
帯のセンターには,右上がりに大きく「そのデザインには“理由”がある」と書かれおり,右下には,スミアミの丸の中に白字で「デザイナー必読!」と書かれています。
表紙カバーや帯にも,本書のエッセンスが凝縮されていて,力強いデザイン解説書となっています。
川崎紀弘氏 /アレフ・ゼロ著 「実例で学ぶ『伝わる』デザイン」(グラフィック社刊)) http://www.graphicsha.co.jp/detail.html?p=28477
(文責:名古屋本社・企画ソリューション部 伊藤隆)









