AJEC編集講座・第3回「レイアウト・デザインの基礎知識」聴講レポート
今回は「レイアウト・デザインの基礎知識」をテーマに、株式会社ベネッセコーポレーションの並木瑛子氏が、編集者がいかにデザイナーとやり取りして、読者に伝わる紙面・画面を構築していくかについて、多角的な解説をされました。
講義内容を3つの視点から整理してまとめました。
●【講座レポート】2026年度 AJEC編集講座 第3回
「レイアウト・デザインの基礎知識」
日時:2026年9月10日(木) 18時~19時30分 【オンライン形式】
(講師:株式会社ベネッセコーポレーション 並木 瑛子 氏)
1. デザインセンスを高めるためにはどうしたらいいか
「デザインセンス」は生まれつきの才能ではなく、エディトリアルデザインにおける理論の理解と日々の観察・実践によって再現性高く磨くことができます。
① 理論と構成ルールを学ぶ
感覚だけに頼るのではなく、まずは基本原則を押さえることがスタートラインになります。
- 基本構図の使い分け:安定感を生む「三角形構図」、信頼感やフォーマルさを演出する「水平・垂直構図」、動きや活力を与える「対角線・斜め構図」、統一感と規則性をつくる「グリッドデザイン」など、企画のねらいに応じた骨組みを選び取ります。
- 視線誘導の法則:読者の視線は「Zの法則」(横組み・左開きの場合、左上から右下へ)や「Nの法則」(縦組み・右開きの場合)に沿って動きます。要素のジャンプ率(タイトルと本文などの対比の度合い)や余白を活用し、読者が自然に目を引き寄せられる工夫をします。
- 色彩の3要素(色相・明度・彩度):単に「キレイな色」を選ぶのではなく、色の心理効果(赤=情熱・危険、青=理性・静寂など)や、暖色/寒色、進出色/後退色といった視覚効果を理解して配色します。
- カラーユニバーサルデザイン:20人に1人存在するとされる色覚特性を持つ読者に配慮し、色の明暗差をつけたり、模様や文字での情報を二重化したりして、誰もが正しく理解できる編集スキルを取り入れます。
② AIを思考と対話のパートナーとして活用する
生成AI(GeminiやChatGPTなど)を相手に、「このレイアウトはどう評価できるか」「この企画にはどんなビジュアルトーンが合うか」といった意見交換を日常的に行うことで、デザインを言語化・客観視する力が養われます。
③ 日常の観察と視点を変えたアプローチ
普段接する雑誌、書籍、広告、パンフレットなどを「なぜこの配置なのか」「なぜこの色使いなのか」と意識して観察します。また、時間帯や自分の気分を変えて同じ誌面を見返すことで、読者が受け取る多様な印象に気づくことができます。
2. デザイナーと円滑にやり取りをするにはどうしたらいいか
編集者とデザイナーは、誌面を挟んで向き合うパートナーです。感覚的な指示に終始せず、メッセージの言語化と適切なフィードバックを通じて協力関係を築きます。
① 言葉で企画の意図・メッセージを正しく手渡す
編集者が形にしたい企画の意図や読者に伝えたいメッセージを、明確な言葉としてデザイナーに共有します。デザイナーはその意図を自らの感性・専門技術で受け止め、レイアウト・デザインを形にします。
② 共通言語をもって対話する
専門的な作業自体はプロのデザイナーに任せつつも、編集者側も構成要素の用語(見出し、リード、図版、柱、余白、行間・段間、文字組み等)や表現効果の基礎知識を身つけます。そうすれば、デザイナーと共通言語による対話ができるようになります。
③ 上がってきたデザインの工夫を読み解く
上がってきたレイアウトに対して、「自分が込めたメッセージがどのようにデザインへと翻訳されたか」を、編集者自身が最初の読者となって確認します。思っていた意図とズレがある場合は、闇雲に直すのではなく、どういったところで自分の意図が伝わらなかったのかを言葉にしてデザイナーにフィードバックします。
3. 会社を代表したデザインフォーマットづくりで気をつけるべきこと
レイアウトやデザインは単なる見た目の装飾ではなく、会社の顔であり企業の立ち位置・ブランディングそのものです。フォーマット作成においては以下の点に留意する必要があります。
① 個人の好みや感覚ではなくブランディングを意識する
編集者個人の趣味・志向ではなく、この出版社・この会社として世に出すのにふさわしいクオリティとカンパニーカラーになっているかという視点をもちます。
② 最後は編集者が背負う
AI等のツールを用いて効率化を図る場合であっても、最終的な成果物や表現に対する責任は人間(企画者・企業)にあります。自社の看板を背負ったコンテンツとして読者に届けて成立するかという視点から判断することが重要になります。
③ 目的と機能を優先した余白・段組み・構成設計
- 紙面の目的:情報を分かりやすく伝え、心地よく読ませるためのレイアウト設計を徹底します。
- 版面の設計:余白を大きく取れば上品で落ち着いた印象(文芸書や美術誌など)に、詰めれば情報密度の高い活気ある誌面になります。
- 段組みと可読性:早くテンポよく読ませたいコンテンツは段組みを増やし、じっくり読ませたいものは段数を抑えるなど、メディアの性質に合わせたフォーマット設計を行います。
おわりに:明日からの「ものづくり」に向けて
「完成したときに読者にどう届いてほしいか」という着地点をイメージしながら、今回の講座で得たひとつひとつの知識をパズルのように当てはめてみる。そうやって実際のレイアウト・デザインの制作に携わっていくことこそが、デザインの引き出しを増やし、自分のスキルとして定着させていく一番の近道なのかもしれません。
(企画ソリューション部/伊藤隆)
【アーカイブ配信のご案内】
第3回講座(90分)のアーカイブ配信を期間限定で公開中です。
第3回 AJEC編集講座「レイアウト・デザインの基礎知識」
(講師:株式会社ベネッセコーポレーション 並木 瑛子 氏)
- 視聴期間:2026年9月24日(木)12:00 ~ 10月14日(水)23:59まで
- 視聴料:2,000円
- 詳細・お申し込み:https://archive-ajec-koza260924.peatix.com/
※期間を過ぎますとご視聴いただけなくなりますので、お早めにお申し込みください。








