編集と印刷・のんびりコラム 「第2回 カラー印刷のお話(2)」

こんにちは。エディット企画ソリューション部の藤本です。

突然始めたのんびりコラム。ここではちょっと古い時代に戻って、レガシーな編集や印刷技術をのんびり振り返ってみたいと思います。今回は「カラー印刷」の話の続きです。

 カラー印刷のお話(2)

印刷ではCMYの3原色で疑似的なフルカラーを再現するために、アミ点に分解した版を重ね刷りするという話をしておりました。

ところで印刷でのこの色再現には、もうひとつ難点があります。それは黒の再現です。原理上はCMYを等しく混合すれば黒なのですが、印刷インキは化学薬品みたいなものです。色を出す発色原料以外に粘度を一定にする薬品や水に溶け出さないようにする薬品など、さまざまなものが調合されています。その兼ね合いから、3つのインキを混ぜ合わせても、重ね刷りしても、漆黒になってくれないのです。多くのインキでは、どことなく緑がかった不気味な黒になってしまいます。

これを解決するために、実際のカラー印刷ではCMYのインキにK、つまり黒インキを加えたCMYKの4色でカラーを再現します。印刷業界では「黒」とは呼ばず「墨」と呼ぶことが一般的です。CMYの3原色になぞらえた言い方で、黒をblackのBで表さないのは、色の3原色にあるbluevioletのBと混同しないようにでしょう。KはblacKのKとかKuroのKとか言われることがありますが、単語の最後や日本語を元にするのは説明が苦しいですね。Kは色の略語ではなく、印刷物の基盤となる色=Keycolorまたは、印刷の基盤となる版=Keyplateの頭文字という説が有力です。
※Bは一般にblueとされますが、ここではbluevioletとしています

印刷インキにKを加えることで、メリットが2つ生まれます。その第1は、白い紙に対して最もコントラストが高く読みやすい黒色を、重ね刷りせずに再現できること。常にシャープな黒を再現することができます。印刷物の本文は9割方黒です。これが全部重ね刷りでぬめ~っとした黒だったら、読むほうもぬめ~っとしてしまいますよね。その第2は、インキの総量をケチることができること。CMYの3色の場合、黒に近い暗い色はことごとくこの3色を重ね刷りすることになり、暗い色使いが多いほどインキ代が嵩むようになります。極端には黒色。これは3色全開ベタ塗りでの重ね刷りになります。Kを加えることで、インキ代を最高3分の1にできます。

CMYKの4色でカラーを再現する。これが印刷のスタンダードで「プロセスカラー印刷」といいます。プロセスカラー印刷では、原理上は黒色を含めてほとんどのカラーを再現できるCMYにKを加えますから、色によってはインキの機能が重複します。例えば濃さ50%のグレーは、K50%で表現できるほか、CMY各色を50%で重ね刷りしてもいいわけです。この場合は普通前者を選ぶでしょうが、C80%+M20%+Y50%の青緑は、各色共通の20%分をK20%に置き換えてC60%+M0%+Y30%+K20%でも表現できるわけで、この場合はどっちを選ぶか微妙な問題です。実際は前者のほうが発色が綺麗で後者はちょっとだけ色味が落ちます。しかしインキの使用量は後者の方が3割近く少ないのでコスト優先ならば後者といった具合で。

CMYに共通する濃さをKに置き換える設定をGCR=gray component replacementというのですが、その設定次第で写真の色などがかなり変化してしまいます。RGBでデータ管理されているデジカメの写真を印刷用のCMYK変換するときも、この設定はとても大切。実際には日本の印刷業界における標準的な変換アルゴリズムというものがあって、更に印刷会社ごとに自社の印刷機にドンピシャ合わせたアルゴリズムを開発している場合もあって、キチンと変換されているのですが、素人がここを不用意にいじってしまうと、ヘンな色味の印刷物ができたりします。とまぁ、印刷でのカラー再現というのは、とても微妙なものなのです。印刷機のセッティング次第でも少し変わりますし。

  *   *   *

ちょっとマニアックな沼に入りかけたので、今回はここまで。編集、印刷業界の方には「何をいまさら」な話題ですが、ティーブレイクとしてお付き合いください♪