AJEC1月編集講座 「編集制作とコスト」を聴講して

講師の須藤氏から教わった内容を元に、編集者として大切にしたい「10の気づき」を整理してみました。 若手の方はもちろん、中堅・ベテランの皆さんも、今の自分のコスト感覚と照らし合わせてご一読いただけますと幸いです。

日本編集制作協会(AJEC)/ 1月オンライン編集講座
テーマ:「編集制作とコスト」
日時: 2026年1月22日(木)18:00~19:30
講師:ベネッセコーポレーション ものづくり推進本部  須藤 渉一 氏

知っておきたい「編集者としてのコスト感覚」:10の気づき

1.「会社のお金」は、自分たちの仕事の成果そのもの

「お金の管理は上の仕事」と切り離すのではなく、現場の編集者自身がコストを意識することで、自分たちの制作環境を守ることにつながります。「自分の日々の判断が、自分たちの場所を支えている」という実感を大切にしていきたいところです。

2.「固定費」という存在を、心の片隅に

何もせず座っているだけでも、給料やオフィスの家賃、PCの代金は発生し続けます。「存在しているだけでコストがかかっている」という事実を意識することで、1日の時間の使い方がより有意義なものになるかもしれません。

3.外注費(変動費)に潜む「見えない時間」のコスト

外注費などの変動費は、仕事量に応じて増減するため、一見すると会社側のリスクが低く見えます。しかし、そのディレクションに自分の時間をかけすぎてしまうと、結果として「人件費」という固定費を削ることになります。変動費の裏側にある「自分の労働時間」にも目を向けておきたいです。

4.制作時間と「生産効率」のバランス

講師の須藤氏は「1ページ1万円制作予算の仕事に、もし1週間かかりきりになると、利益が吹き飛ぶ」という例を挙げ、生産効率の重要性を説いていました。質を追求しつつも、かけた時間に見合う成果かどうかを、ふと立ち止まって考えてみたいところです。

5.「事務作業」というコストを可視化する

メール、スケジュール管理、資料作成。これらは直接的な制作費には現れませんが、確実に私たちのリソースを消費しています。こうした「名もなき作業」をいかに効率化できるかが、良い本づくりを続けるための鍵になるのかもしれません。

6.直接的な費用(直接費)と、間接的な費用(間接費)

費用を「直接費」と「間接費」に分けて捉えることで、仕事の構造がよりクリアに見えてきます。

  • 直接費:特定の案件に直接関わると明確にわかる費用(原稿料、デザイナー委託費、取材交通費など)
  • 間接費:特定の案件に紐づかないが、会社運営に不可欠な費用(オフィスの光熱費、ネット通信費、さらには給湯室のポットでお湯を沸かす電気代まで)目の前の制作費だけでなく、これらすべての費用が組み合わさって「一冊の本」が成り立っていることを意識していきたいものです。

7.「損益分岐点」を意識した動き方

「どれくらいの売上(あるいは部数)があれば、かかったコストを回収してプラスに転じるのか」。この境界線(損益分岐点)をイメージして動くことは、クリエイティブな熱意をビジネスとして成立させるための、大きな助けになります。

8.「リアルな相場」を味方につける

最新の印刷代や制作費の相場を知っておくことは、単なる節約のためではありません。現実的な予算の中で最大限に良いものを作るための「知的な武器」として、常に情報をアップデートしておきたいです。

9.数字を管理する人たちへのリスペクト

経営や財務の担当者が、なぜこれほどまでにコストに厳しいのか。その背景にある「組織を守る責任」を想像してみることで、編集現場と管理部門がより良い協力関係を築いていけるようになりたいものです。

10.「熱意」を「持続可能」にするためのコスト意識

「良いものを作りたい」という情熱は編集者の宝です。その情熱を一生の仕事として続けていくために、コストという冷静な視点を併せ持つ。そんな「熱い心と冷たい頭」の両立こそが、プロとして長く活躍し続けるための秘訣なのかもしれません。


この講座を聴講して、日頃から「今、自分が使っているこの1時間は、いくらのコストを生んでいるんだろう?」と、自問自答してみようと思いました。

2026年2月13日 株式会社エディット(文責:伊藤隆)