編集と印刷・のんびりコラム 「第4回 ダメ色と冴え色」

こんにちは。エディット企画ソリューション部の藤本です。

このコラムではちょっと一息、少し古い時代に戻ってレガシーな編集や印刷技術をのんびり振り返ってみたいと思います。今回はタイトルを変えましたが、しつこく「カラー印刷」の話の続きです。

(4) ダメ色と冴え色

カラー印刷はCMYK4色インキによるプロセスカラーが基本です。更に広い色域再現を狙った6色印刷、7色印刷も開発されていますが、残念ながらマイナーです。という話を前回までにしましたが、今回はダメ色と冴え色の話です。色域の話とは別に、カラー印刷には得意な色と苦手な色があります。この差は印刷の仕組みによるもので、細かい線や文字になるほど顕著になります。

印刷がもっとも得意な色はCMYK各色のベタ、つまり100%色です。これらの色を「一次色」といいます。得意というのは、どのような使い方をしても色味変化がなくシャープさを失わないということです。例えばごく細い罫線を印刷する場合、CMYKの一次色ならばそのものズバリのインキ100%で印刷しますから、かすれたり色がにじんだりすることがありません。黄色はそもそも色が明るく薄いのでそういった用途には不向きですが…。同様に非常に小さな文字も、一次色ならばシャープさを失うことなく読めます。

身の回りの印刷物をあれこれ見てみると、極細線や小さな文字は圧倒的に黒。これは黒が白い紙とのコントラスト比が最も高く読みやすい基本色であるという別の理由もありますが、黒が印刷の得意色、冴え色だからでもあります。そしてシアン(濃い水色)やマゼンタ(濃いピンク)の線や文字も意外と多く見られます。

あれれ、茶色や若草色の文字がすごくシャープな本もあるよ!ということもあります。多くの場合、これらは1色か2色の印刷物で、インキを特別な色(これを「特色=スポットカラー」といいます)に変更して印刷しているんですね。これに対して、フルカラー印刷でかつ本文に特別色のインキを加えることは、コスト的に難しいのです。

CMYKの一次色ほどではないけれど、まぁ得意な色というのがあります。CMY各色のうち2色をベタ(100%)で重ねた色です。赤はマゼンタ+イエロー、緑はシアン+イエロー、そして紺(青紫)はシアン+マゼンタ各100%で表現される色で、これらを「二次色」といいます。それぞれの色成分を細かなアミ点に分解する必要がないので、わりと色味変化なくシャープさを保つことができます。

身の回りの印刷物で線や文字に使われる色として、RGBはわりと多く見かけます。ただしこれらの二次色は一次色と違って2色の重ね刷りになりますから、印刷時にちょっとでも各版の見当がずれると、途端にぼやけた感じの表現になってしまいます。大きな文字、大きな面積の塗りであれば影響は微少ですが、ごく小さな文字や細い線では、わずかな版のずれが見づらさにつながってしまいます。

さて、勘のいい方は見えてきたかもしれませんが、実は上記以外の色はすべて印刷の苦手色、つまりダメ色です。ダメ色といっても、色味が連続的に変化する写真の中に現れる色や、ある色で紙面をベタ~っと塗りつぶすような場合の色としては特に問題はありません。それすら苦手だったらカラー印刷になりませんからね(笑)。苦手なのは、その色を使った細かい表現です。

プロセスカラー印刷で一次色・二次色以外を表現するには、CMYKの少なくとも1色を細かいアミ点にして掛け合わせる(つまり重ね刷りする)必要があります。色味が連続して変化する写真などや一面の塗りつぶしでは、ある程度まとまった面積に多くのアミ点を打てますが、非常に細い線や小さな文字では十分な数のアミ点が確保できず、線や文字が点線になってしまうのです。

中でも薄く明るい色、いわゆるパステルカラーはダメ色の代表です。明るい色、薄い色を表現するには、より小さく密度の低い点が必要ですから、細かい表現ではいよいよアミ点の数が確保できなくなります。その結果線や文字がかすれて見づらくなるだけでなく、わずかな印刷時の見当ずれがいよいよ見づらさを助長してしまうのです。

身の回りの印刷物をあれこれ見ていただくと、パステルカラーや薄手の色、CMYKまたはRGBから外れた色味は細かい部分の表現にはあまり使われておらず、あったとしても塗りつぶしや大きめの文字、太めの罫線であることがほとんどです。慣れたデザイナーや編集者は印刷のダメ色と冴え色を熟知していますから、ダメ色を無理なところに無理に使ったりはしないわけです。

そうは言っても、中にはオキテ破りな色使いをする印刷物もありました。その代表格はかつて一世を風靡した某週刊情報誌。もし古書店などで見かけることがあれば、是非お買い求めのうえ、じっくりご覧ください。おすすめスポットやお店の情報などの細かい文字が薄緑や薄茶などのダメ色でバシバシ印刷されています。結果、見れば見るほど見づらい! 文字を囲む罫線なんかは欠けまくりです。当時は現在に比べて印刷機の見当精度が少し低かったこともあり、肉眼でもぼやけや線の欠けが十分に堪能(笑)できます。

印刷の仕上がりが気になる私には、個人的にダメダメです。…でもあの週刊情報誌、たぶん確信犯でやっていたのだと思います。印刷仕上がりのクオリティよりも、見た目のカラフルさ優先でいいんだウチは、って。印刷の技術的な短所を避けて色使いなどの表現に制約をかけるよりも、読者が楽しめるカラフルな誌面を優先する。これも編集方針として十分にアリですよね。ちなみに現在は、印刷機の見当精度がグッと上がり、また網点の生成方法にも変化があり、以前ほど色の苦手は出なくなってきています。網点の変化についてはいつかまた。

ちなみにWebなどの世界ではこのダメ色、ほとんど関係ありません。スマホやモニターの画面表示はCMYKのインクでもなくアミ点でもなく、RGBの光の調合ですから。それゆえにDTPアプリの画面上では薄い色味もキレイに表示できてしまい、拡大してもキレイな色のままです。印刷物に対する知識や経験が十分でない編集者やデザイナーの中には、画面を見て安心してしまい、印刷物になったものを見て「どうして~!?」愕然とする、なんて悲しい経験をする人がいるわけです。

例外はあるものの、細部まで高品質な印刷品質をキープしようと思うと、ダメ色と冴え色を意識した配色計画が必要になるんですよ、というお話でした。

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ごめんなさい、ずいぶん長くなってしまいました(汗)。この話、もうちょっとだけ続きます。引き続きティーブレイクとしてお付き合いください♪