編集と印刷・のんびりコラム 「第5回 黒ベタとリッチブラック」
こんにちは。エディット企画ソリューション部の藤本です。
このコラムではちょっと一息、少し古い時代に戻ってレガシーな編集や印刷技術をのんびり振り返ってみたいと思います。今回は延々続いておりました「カラー印刷」の最終話です。
(5) 黒ベタとリッチブラック

商業印刷では、インキの3原色であるシアン・マゼンタ・イエローにブラックを加えた4色によるプロセスカラー印刷が標準です。という話はもうしましたね。プロセスカラー印刷ではブラック、つまり黒インキがあるおかげで本文の墨文字が読みやすく、暗い色の再現がよく、印刷時のインキ総量も抑えられる。という話もしましたか…。では今回は、マニアックに黒色の話をば。
原理的には不必要な黒インキをせっかく加えたのですから、基本的に黒色は黒インキで刷ります。ところが、ケースによっては黒色を黒インキで刷るとかっこ悪い仕上がりになってしまう場合があります。
1つはカラー写真や他の色の模様の上に黒色の大きなタイトル文字や図形を乗せる場合です。実は黒インキ、完全な漆黒ではなくて、多少他の色が透ける特性があります。速乾性や他の色インキとの重ね刷りにおける相性などを考慮してこうなっているのでしょうが、例えば写真や模様から半分はみ出す形で大きな黒の文字を配置すると、写真や模様に乗っている部分は濃い黒、白い紙に乗っている部分は少し薄い黒に見え、気づくとみっともなく感じる仕上がりになってしまいます。下が写真の場合は微妙に写真が黒の下に透けているように見えてしまうこともあります。
これを避けるためには、黒い字の下にくる写真や図形をあらかじめくり抜いておくか、印刷原版の出力時に自動でくり抜き処理をする「ノックアウト」という設定をしておきます。ただ、この方法は万が一印刷時に各色の見当がわずかでもずれると、黒い字と下の写真や図形の間にかすかな隙間ができてしまう危険があって、印刷に気を遣うものになります。
もう1つは誌面を大きな面積で黒く塗りつぶす場合です。花火の特集とか、高級感を演出する目的とかで黒地に写真などを配置してみたりするような場合ですが、大きな塗りつぶしの面積を黒インキだけで刷ると、ちょうど墨汁で塗りつぶしたような艶消しで黒くなり切らないダサ色になってしまいます。
これを避けるためには、DTPソフト上で色を指定する時に、ただの黒色つまりK100%ではなくCMYの各色をわざと混ぜる指定にします。たとえばK100+C30+M30+Y30といった具合に。こうすることで黒色に艶と深みが出て漆黒に近づくわけです。黒色のダブル乗せ、特盛りですね。それならば全色全開で重ね刷りしたら、さぞかしイイ黒色になるだろうと思うのですが、各色100%の計400%配色は印刷ではNGとされます。インキの上にインキが乗り切らずかえって色味が変になったり印刷機に不都合が起きたりするからです。ともあれ、各色を混ぜて表現される艶のある漆黒を「リッチブラック」といいます。
さきのはみ出し黒文字も、ノックアウト設定にする方法のほかに文字色をリッチブラックで指定することで透け見えを防止できます。ただ文字をリッチブラックにすると、印刷の見当ずれがあった場合に文字の細かいエッジがシャープでなくなってしまいますから普通は使いません。
このへんに着目していろいろな雑誌やチラシなどを見てみると「あ、透けてる」とか「黒に段差付いてる」なんてものが見つかります。逆にデザインに気を遣っている雑誌などでは、そもそも大きな黒いタイトルが写真や模様をまたぐ、ということをしていないことにも気づきます。編集やデザインは、そんな見えない印刷上の縛りの中であれこれ工夫されているわけです。
昔はこれら印刷特性に起因する印刷色のダメ色冴え色や黒の表現は、印刷会社内にある製版セクションの腕の見せ所でした。それがDTPになって、今度はその知識やノウハウの一部が編集者やデザイナーにも求められるようになったのです。今回の黒色の話でいえば、制作中のデータをモニタで見ているだけでは、「ノックアウト」の設定がしてあっても、していなくても、また「リッチブラック」の色配合がしてあっても、していなくても、黒は黒で同じ表現になっているため、これらの違いは印刷して初めてわかります。
ですからこうした知識を持たない編集者とデザイナーが組んでしまうと大変です。同じページにただの黒とリッチブラックが併存して艶消し黒と漆黒のまだら模様になっている雑誌なんかを見つけると、ガッカリしてしまいます。印刷のダメ色冴え色や黒の表現は、印刷の知っていて頭の中で先回りのシミュレーションができることが大切なのですね。
なんだか編集の話というより印刷技術の解説みたいな話が続いていますが、話の軸がずれているとは思っていません。だって私たち編集者が作るのは、今でも大半が「印刷物」なのですから。編集者の仕事は本の中身を作ることだけではありません。それが何千何万と印刷され製本され、そのうちのたった1冊の完成品を読者は手にするわけですから、手にした本の「モノ」としての出来映えで仕事の評価が決まると考えるべきでしょう。工業製品としての本の品質にも責任を持とうと思うなら、それがどう作られているかをよく知り、その特性をもっともよく引き出せるように工夫を凝らすのは当然だろうと思います。…なんだかお説教がましいですね(汗)。まぁ、印刷での色の仕組みは知って損する話じゃない、ということでございます。
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長々としたコラムをお読みいただき、ありがとうございます。カラー印刷の話は、これにて打ち止め。引き続き別のテーマにて、ティーブレイクにお付き合いください♪
(企画ソリューション部 藤本)








