AJEC編集講座・第1回「編集制作工程と編集者の役割」聴講レポート

2026年度AJEC編集講座がスタートしました。
第1回の講師を務めたのは、AJEC編集講座ではおなじみの藤本隆氏でした。
新入社員からベテランまで、それぞれの現場で応用できる編集制作の全体像と心の持ちようについて語られました。
その講義内容には、毎日の実務をよりスムーズに進めるためのヒントが満載でした。ここでは、藤本氏のお話を私なりに捉えて、編集者の仕事を円滑にする「10のヒント」をまとめてみたいと思います。

●AJEC編集講座・第1回「編集制作工程と編集者の役割」聴講レポート
日時:2026年6月25日 18時~19時30分 【オンライン形式】
講師:藤本 隆 氏

●編集者の仕事を円滑にする「10のヒント」

ヒント1:年に一度は仕事の棚卸しをして、自分の工程を調整してみる

経験を積むほど、いつのまにか独自のやり方に固執してしまいがちです。定期的に自分の編集工程を振り返り、業界のもつスピード感に合わせてチューニングし直す時間を設けることが、ステップアップへの近道になるかもしれません。

ヒント2:自分自身が担う役割の範囲を正しく見極める

編集者の役割は、会社や編集部、あるいは案件によって本当にさまざまです。「企画から深く関わるスタイル」なのか、「校正に特化するスタイル」なのか、まずは自分が今どの範囲を任されているのかを把握することから、編集者としての柔軟性が生まれてきそうです。

ヒント3:関わる人全員が握り合える基本形を共有する

Web、動画、アプリ、オンデマンド印刷など、情報発信の出口は多様化しています。だからこそ、関わるクリエイターやパートナー全員が迷わず進めるための「基本的な共通言語(共通のワークフロー)」を、編集者が真ん中に立って共有することが大切です。

ヒント4:仕事が忙しいときほど理想のメインフローを意識する

変則的な案件や複数のやり方に追われると、進行は破綻しやすくなります。多忙を極めるときこそ、基本である「編集制作工程のメインフロー」を意識し、そこから外れないようにコントロールする冷静さが必要かもしれません。

ヒント5:「印刷」の複雑な仕組みや化学的原理を知っておく

例えば、主流である「オフセット印刷」は、版から直接紙に押すハンコ(活版)とは異なり、水と油の化学原理を利用して一度ゴム(ブランケット)にインキを移してから紙に転写するという、非常に繊細で複雑な仕組みをとっています。このメカニズムをほんの少し知っておくだけでも、データ作りの見方が変わってきます。

ヒント6:各工程を単発で捉えず、並行して全体を俯瞰する

DTP組版、デザイン、校正。これらを独立した別々の作業として捉えるのではなく、編集制作工程のなかでどう相互に影響し、機能し合っているのかを、プロジェクト全体のつながりとして俯瞰してみることが大事かもしれません。

ヒント7:デザインが始まってからが、編集者の手腕の見せ所

編集者は、著者から預かった原稿を原稿整理して終わりではありません。デザインフォーマットに確定原稿を落とし込んでからが、編集者の腕の見せ所です。デザイナーの意図を汲みつつ、読者の視線に立ったチェックが大切になります。

ヒント8:3回の校正でスマートに終わらせる仕組みを考える

初校、再校、三校。通常、3回の校正でバトンを繋ぎ、きれいに終わらせるのが理想の進行です。ここで問題が解決しきれないと、四校、五校という果てしない泥沼へ突入してしまいます。3回で終わらせるための事前準備が大切になります。

ヒント9:世に出して瑕疵のない紙面にするために、全体を整える意識を持つ

校正の目的は、単なる誤字脱字の指摘に留まりません。事実関係、倫理的リスク、デザインの整合性を含め、《これが社会に流通したときに、一点の曇りもないか》をあらゆる角度から検証し、美しく整えることが編集者の大切な役割です。

ヒント10:変化を恐れず、新しい技術との対話の時間を大切にする

紙メディアの伝統を守る一方で、デジタル技術は日々進化しています。最新のDTPツールや進行管理の手法にアンテナを張り、それを学ぶための対話の時間を惜しまない姿勢。これこそが、情報発信の多様化を味方につける編集者であり続けるヒントではないでしょうか。

(企画ソリューション部/伊藤隆)