エディット通信(2023年大暑号)

皆さまへ

いつもたいへんお世話になっています。
エディットのメルマガ「エディット通信」(2023年大暑号)をお送りします。

AJEC編集講座「次々とヒット作を生み出す作家エージェントの存在」を聴講して


講師の栂井理恵(とがい・りえ)氏は、法律事務所や出版社での勤務、フリーライターを経て、2006年にアップルシード・エージェンシーに入社されました。
同社で50人以上の作家、400冊以上の書籍を手がけてこられました。


多くの実績のなかで得られたノウハウは、編集プロダクションに勤める私にも大いに気づきとなる内容ばかりで、あっという間の90分間の講座でした。

栂井さんのお話と私の境遇とを重ね合わせて、気がついたことをまとめております。
よろしければ、ご一読いただければ幸いです。

●AJECオンライン7月編集講座
・テーマ
 次々とヒット作を生み出す作家エージェントの存在
・講  師:栂井理恵(とがい・りえ)氏         
 株式会社アップルシード・エージェンシー
 取締役副社長 
・日  時:2023年7月20日(木)18:00~19:30


作家エイジェンシーは、作家のために文筆活動や出版に関する業務を行い、作家の代わりに原稿や企画を出版社に売り込み、契約条件や報酬を交渉・調整する業態です。


栂井さんのお話から、作家(人材)を【発掘】【育成】【PR】をすることが、作家エイジェンシーの仕事の基盤となるのではと思いました。

エディットのような教材系の編集プロダクションの場合は、執筆者・ライターの【発掘】【育成】が、共通する仕事の基盤だと考えます。

アップルシード・エイジェンシーでは、良い作家や執筆者を見つけ出すために有料版・無料版の様々な企画応募を受け付けています。
また、有料版のリーディング審査や著者養成講座などで、新たな人材を見出す機会をさまざまに作られています。

そんな【発掘】の場で、「どのような観点によって有能な作家を見つけ出すのか?」の答えを、栂井さんは5つあげられました。

・「これまでにないもの(創造性と独自性)」が含まれているかどうか
・読者を納得させる背景(専門性・実績)があるかどうか
・トレンドにあった内容であるかどうか
・既存のファンベース(深く狭いコミュニティでも可)があるかどうか
・その人にたくさんの引き出しがあるかどうかでした。

私が興味をもったのは、《その人にたくさんの引き出しがあるかどうか》でした。

具体事例として、横山起也(よこやま・たつや)さんの小説『編み物ざむらい』を引き合いに出されました。
★関連記事 https://newscast.jp/news/4747348

横山起也さんは、編み物作家としての実績があり、今まで書かれた文章の筆力や題材の多さから、作家の可能性があるのではないかと栂井さんが見初めたところから始まった作家デビューの一例です。

そして、デビューを果たした作家に磨きをかける方法として、
・美点を見つける
・引き出しを増やす
・作り続けられるように寄り添う
の3点をあげられました。

編集プロダクションにおいても有能な執筆者の存在が大きな支えとなります。
手をこまねいて、力のある執筆者が応募してくるのを待っているようでは広がりを見せません。

応募してきた執筆者を、まずは受け入れ、育て上げ、新しい一面を発見して羽ばたかせる。
編集者が執筆者に働きかけるこのような役割を、栂野さんのお話から気づくことができました。

作家エイジェンシーと編集プロダクションの違いとして、作家・執筆者を【PR】する機会をもっているかどうかにもあるように思いました。

栂井さんは、「出版不況と言われるなか、出版社は作品点数や売り上げに追われ、作業量も膨大になっているので、売れる企画しか採用されにくくなっている」と指摘されています。

そんななか作家エイジェンシーは、
・優れた作家や企画の発掘
・出版社に合った企画を紹介
・業界動向やトレンド、読者の嗜好などの情報提供を出版社に働きかけることにより、存在感を見せています。

エディットでは、作家・執筆者を【PR】する機会は少ないところですが、上記3点の働きかけに注目し、今後の、出版社様とのつきあい方の参考にできればと思います。

タイトルにある《次々とヒット作を生み出す》とは、編集プロダクションにとっては、《良い書籍を安定して作ることができる》になるのではないかと読み取りました。

良い書籍を作るには良い執筆者が必要です。
良い執筆者を多く抱えるためには、編集者と執筆者との信頼関係が大切になります。
執筆者さえも知らない自分の新たな一面を編集者が発掘し、長くその人の可能性を押し広げ寄り添うことのできる編集者こそが、執筆者との信頼関係を盤石なものにするにちがいない、と栂井さんのお話から気づかされるのでした。

栂井さんがアップルシード・エイジェンシーで17年間培われたノウハウを元にされたお話は、これから必要となる編集者像を示唆する中身の濃いものでした。

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今回もエディット・東京オフィスの塚本鈴夫が,この編集講座のレポートを作成しております。
合わせてご覧いただければ幸いです。
https://www.edit-jp.com/report/20230720/


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